読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

夜の誰かの玩具箱 あさのあつこ著 文藝春秋 2009年

 短編集。『朝のこどもの玩具箱』姉妹本。

 仕舞い夏の海
 達樹は末期癌を宣告された。長年連れ添った妻と一人娘に付き添われながら、思い出すのは故郷の海。そこで出会い、結婚を意識していたのに達樹の前から姿を消してしまった女性のこと。これが最後と訪れた日本海を前に、その女が現れる。

 うちの猫は鼠を捕りません
 変わった名前のバーに惹かれて入ってみると、そこのマスターは彼を常連だと言う。確かに突出しの味もウィスキーの濃度も、彼の舌に申し分なく合っている。彼のいつもの席には見覚えのある女性、この頃折り合いの良くない妻とよく似た女性の姿が。

 夢女房
 本所深川履物問屋『いずた屋』通いの職人、矢八の女房がいなくなった。別の男と逃げたと噂が流れる中、矢八はそんなことはない、夢に女房が出て来て自分に話しかけている、と言う。

 お花見しましょ
 小学校の時の親友が書いた作文が出てきた。廃校になった母校で、ただ一人の同級生。一緒に釣りに行って川に落ちて死んでしまった彼に、罪の意識を持ったまま都会に出てきた武人は、恋人に彼のことを語る。

 蛍女
 都で盗みを働き続けてきた男が最後の仕事として、北の大臣の姫を襲った。美しい娘に心奪われながら、結局殺してしまった男は、後々僧形になり、そして山中で不思議な老婆に会う。

 もう一度さようなら
 夫との関係が冷え切ってしまった雛子。死期の迫った父親と、何故か以前より仲睦まじくなった母親に夫婦の機微を感じる中、雛子の乗っていたバスが事故に会う。瀕死の雛子を励ましたのは、故郷の海を恋う父親だった。…


 するすると読み易い短編集。オチの察しがついてしまう作品もありつつ。
 あさのさんって会話文で状況を説明する癖があるなぁ。…というかライトノベル橋田壽賀子のドラマでもこの傾向はある気がするんですが、ちょっと読んでて饒舌で、ひっかかったり。「枯腸」と言う単語を地の文ではなく会話文で使うかなぁ。漢字で見たら意味の察しはつくけれど、耳で聞いたら私、分からないなぁ。
 話の面白さより、表現方法に気を取られた一冊でした。