読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ハロワ! 久保寺健彦著 集英社 2011年

 ハローワークで嘱託で働く新人の奮闘を描いた連作短編集。
 ネタばれあります、すみません;
 
 仕事の仕事
 沢田信(28歳)は嘱託でハローワーク宮台に勤め始めた。研修期間を経て相談カウンターに座ったが、人のいい沢田はどうやらある種の求職者にはカモに映ったらしい。元配管工の波多野(68歳)は事務職希望。だがだらだらと身の上話を繰り返すばかり、容姿も関係してなかなか職が決まらない。漸く採用してもいいと言う会社があったが、今度は波多野のトラウマに引っかかった。

 ミスター論理
 地方銀行をリストラされた斉藤(43歳)は、ハローワークで相談相手を次々に替えて指名、結局沢田に辿りついた。規則が全てで例外を認めず、女性に偏見を持ち、エリート意識が捨て切れない斉藤を、沢田は辛抱強く説得する。漸くこぎつけた面接試験で、しかし斉藤は不採用になった。

 さよならファラウェイ
 能勢ひなたは31歳。男にも失敗して来た彼女は沢田を気に入った様子で、何度も指名して来ては甘えるばかり。普通なら持て余すひなたに、沢田は根気よく付き合う。

 C調サバイバー
 柳下岳、28歳。大学在学中にできちゃった婚をして、そのまま専業主夫として過ごしてきたが、周囲からの圧力に負けとうとう就職活動を始めた。仕事に楽しさを求める柳下の態度は、企業側からは「ナメてる」としか取られない。だが沢田には、「楽しいこと」も切り捨てられない要因に思えた。

 おててつないで
 女性相談員の上條奈美に、ストーカー行為を働く男が現れた。家の方向が同じ沢田は毎日奈美を送って帰り、二人の距離は縮まって行く。

 ルール 101
 大学生の半井は、現実の厳しさと自分の理想の折り合いがなかなか付けられない。奈美のアドバイスもあって、沢田は相手の気分を害することなく、自分の立場を自覚させるよう立ちまわって行く。

 ラストダンスは突然
 奈美の異動が決まった。夫の転勤にあわせて、別の相談所で働くことになった。お互い惹かれあいながら、沢田と奈美は別れてを選ぶ。

 音楽を君に
 沢田の前の職場の同僚・岸川が現れた。熱心で態度もよく、理想的な求職者なのに、何故か就職先が決まらない。186社目の企業から不採用通知を受けた後、沢田は岸川に圧迫面接を試して原因を探ろうとする。…


 久保寺さん、理性的な仕事をする有能な年上の女性、って好きだなぁ。前の短編でもそんな女性と恋に落ちる教師の話を書いてなかったっけ(笑)。でも今度は一応節度のある関係で、まぁよかった。ここで一線越えてしまうと、奈美さん旦那と同レベルに見られても仕方なくなっちゃうから。
 面白かったです。私自身、ハローワークにあまりいい思い出はないのですがね。仕方ないんですけどね、就職って現実を突き付けられる所だから。こんな親身になってくれる相談員いたかなぁ。…思い出せないなぁ(苦笑;)。
 でも、やっぱりあまり読後感のいいお話ではなかったな。問題ありの求職者が多くて、こりゃ自分が雇う立場なら断るなぁ、って人達ばっかりだったし。まぁ、物語になりそうな人ばかりを選んでいるとそうなるんでしょうけど。
 内部でのストーカー問題や上司の不正(?)を描いたのは、これでは相談員がかっこよすぎるようになるから、かしら。成果を数字で表される、ってのは何だか嫌ですね。