読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

平成関東大震災 いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった 福井晴敏著 講談社 2007年

 ある日の営業を終えたサラリーマン西谷久太郎を突如襲った大地震震源東京湾北部、マグニチュード7.3。
 高層ビルのエレベーターに閉じこめられ、ようやく脱出した西谷が目にしたものは……。

 リアルなデータと情報を満載した実用的シミュレーション小説。
                                  (表紙折り返しの紹介文より)


 福井さんの作品はほぼ読んでいる筈なんですが、これだけはどうも手を出す気がしませんでした。それは多分私が阪神淡路大震災の被災者だから。どんな好きな作家の作品でも、このテーマの小説はきっと楽しめないだろうなぁ、と思ったもので。なら、何で今さら手を出すんだよ、って感じなんですけどね。
 で、やっぱり「…何か違うなぁ」という感が拭えませんでした。
 あくまで私だけの経験ですが、あの後は何だか妙にテンションが高くなりました。とにかくすることは沢山あるし、じっとしていられない。動かなきゃ、動かなきゃであっという間に日々が過ぎました。あんまり小難しく色々考える余裕はなかった気がする。
 精神的に来たのは数日後でしたね。復旧した電車で大阪に出て、そのあまりにも変わらない様子を目にした時。こっちは水道もガスもまだで何日もお風呂に入っていない状態で、なのにいちご大福売ってるんだもんなぁ。
 大阪から神戸に通勤していた同僚が、親から「危ないから勤めに行くのをやめておけ」と言われたと聞いた時とか、そこに住んでいる人間としてはかなり複雑でしたし。
 数日後久々に入ったコンビニで週刊少年ジャンプを見かけ、思わず手に取って捲ってみたら、確か『スラムダンク』の試合が一つ終わってた時も。私の周りの時間はずっと止まっていたのに、変わらず流れている世界もあるんだ、とその時初めて思い知りました。
 感じていたのはおいてけぼり感だったのかな。寂しいような哀しいような。
 私の場合、家は全壊はしたものの家族も友人も無事でしたし、父の知り合いのご厚意で、二週間後くらいには避難もできたので、恵まれた方だったのは重々承知しているのですが。で、あまり言うのもなぁ、と言わないようにはしているのですが、でも今でもあの時のことを喋ろうと思うといくらでも喋れる。
 以前、あるTV番組で、長田区かどこかにあるキリスト像の、前後で災害の度合いが違うとか言うような話題をちらっとやっていて。ああ、これを「不思議なこともあるものだね」と見られるようには、私は決してならないな、と思ったことを思い出しました。
 今さらですが、こういうテーマでの作品は、私は楽しめなくなってしまったんだなぁ、と自覚した作品でした。