読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

やなりいなり 畠中恵著 新潮社 2011年

 『しゃばけ』シリーズ最新作。連作短編集。

 こいしくて
 長崎屋の若だんな・一太郎の元を、代わる代わる疫神が訪れて来る。禍津日神疱瘡神、時花神等本来なら橋でそれなりの足止めを喰らう筈の神様を、守り番の橋姫が無制限に通しているらしい。橋姫に何が起こっているのか。
 
 やなりいなり
 守狐が作った稲荷寿司を、横から手を出して食べようとする輩が現れた。どうやら幽霊らしい若い男は、生前のことを何一つ思い出せないと言う。独特の口調から駆けだしの噺家ではないかと見当をつけた若だんなは、男の身元調査に乗り出す。男はは駿府から来た盗人集団と関わりがあるらしい。

 からかみなり
 長崎屋の主人・藤兵衛の行方が三日前から分からなくなった。若だんな達は心配してあれやこれや想像を巡らすが、どれもぴんとくる予想がない。ここ何日かで起こっている変事はやたらと雷が鳴ること、若だんなは何となく真相に気づく。

 長崎屋のたまご
 青い空からまんまるな、卵のようなものが落ちて来た。若だんなが目を離した隙、玉は離れからぐんぐん逃げ出した。鳴家達が追いかける一方、離れには雲の上で生まれたという兄弟妖が訪れて来る。一魅、百魅、三十魅、青い玉を巡って目の前で繰り広げられる兄弟げんかに、若だんなは眼を丸くするばかり。妖たちが気にする青い玉の正体は。

 あましょう
 若だんなが栄吉の奉公先を訪ねると、丁度そこで浜村屋の新六と幼なじみの五一が言い争いをしているところだった。新六の妹・美津は元々五一の許婚だったのに五一に断られ、五一は房州へ一人黙って旅立つのが腹立たしい、と新六の言い分。五一は五一で新六が、自分に黙って嫁取りを決めたことを気にしていた。相手は疱瘡の後遺症でひどいあばた面になったおれん、両替屋松木屋の娘で多額の持参金がついている。金の為の嫁取りに、五一は心を痛めていた。

 今回は料理の紹介も絡めつつ。「鳴家が60数えるまで」とかの表現に、「凝ってるなぁ」と可愛いく思うか「回りくどい」といらっとするか、その時の精神状態にかなり左右されそうだと思ってしまいました。…ということは私、多少いらっとしたんだな、心が狭くなってますね(苦笑;)。
 と言うか、多少無理のある展開の作品が多かった気がしたので、それもあったかなぁ。旦那が三日も音沙汰なかったらもっと騒がないかいとか、佐吉が旦那を振り回す図ってのはえらくまんがちっくだなぁとか、『あましょう』では何であんなチンピラがいきなり襲ってくる(しかも何度も)んだろうとか。おれんが自分を諦めている理由は何だか切なかったですねぇ。
 相変わらず表紙も可愛かったし、出て来るお菓子も御飯も美味しそうで読み易かったです。…何だか読み所が違ってきてる気がする;