読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ペリー 佐藤賢一著 角川書店 2011年

 マシュー・カルブレイス・ペリー海軍大佐。
 独立戦争で闘った父を持ち、自身はメキシコ戦争を勝ち抜いた軍人家系。
 しかし根っ子にあるのは第二次イギリス戦争で英雄となり、夭折した兄のこと。そのコンプレックスを拭いされないまま、ペリーは時の政府にジャパンへの使節派遣を進言する。
 チャイナは既にイギリスの影響下にある。どんなに補給・貿易で利益を得ようとも、イギリスの二番煎じでしかない。ヨーロッパ諸国と同じアフリカ回りインド洋航路ではなく、太平洋横断でアジアを目指せば世界の海を制することができる。そのためにはジャパンを補給基地にする必要がある。
 政権交代もあって当初の目的ほどの規模は得られなかったものの、ペリーはアメリカが誇る蒸気船で自らアジアを、ジャパンを目指す。
 チャイナは「太平天国の乱」で混乱状態、駐留していたマーシャル弁務官はジャパンどころではないと蒸気船をチャイナに回すよう主張するが、ペリーは聞く耳を持たない。振り切ってリュウチュウへ、さらにジャパンへ。しかもオランダとの交易で外国人に慣れているナガサキではなく、エドに近いウラガへ。ごり押しな外交を繰り広げながら、ペリーにはジャパンに対して親近感を覚えるようになっていた。…

 佐藤さんの、「幕末を違う視点から見てみようシリーズ」(←本当かよ)第二弾。
 特にわくわくどきどきした、ということはなかったのですが、あの頃アメリカには、中国やイギリスにはこういう事情があったのか、という点で面白かったです。
 個人的に「へえ」と思ったのは、琉球に来たペリーが受けたおもてなし。池上永一さんの『テンペスト』でもあったシーンですね。アメリカ側からはこういう風に見えていたのか、と言うことで。『テンペスト』では歓待しつつ「洗練」という嫌味で上手く受け流したアメリカの来航、この本でもペリーが居心地の悪さを感じていたと言う風に描かれていました。で、「ジャパンではこんな目にはあわないだろう」とウラガに来て、人懐っこくも右往左往するジャパンに好感を持った、と。
 ペリー、行き先に京都選ばなくてよかったねぇ、としみじみ思ってしまいました。京都だったらもっと嫌味な、いかにも「え~、わかりませんのん?」「これだから田舎者は…」みたいな歓待をしてたんじゃないのかなぁ、とか。…偏見に満ちてるなぁ(笑)。
 やっぱり力尽くで来る外交方法には不快感がありました。いかに親近感を持たれようと、あくまで向こうが勝手に抱く感情ですし。…とかいいながら、あくまで現代の日本人が描いた当時のアメリカ人、というちょっと複雑な視点であることを忘れてはいけない、と肝に銘じつつ。…捻くれてるかなぁ(苦笑;)。