読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

オーダーメイド殺人クラブ 辻村深月著 集英社 2011年

 小林アンは美人で成績もそこそこよく、教室内ヒエラルキー上位の「リア充」女子グループに所属している。同級生のイケてない男子を「昆虫系」と名付けて見下しているが、いつも一緒にいる友達に対しても、そのセンスや価値観を「ありふれたもの」として一歩引いた立場から冷めた目で見ているような女の子。少女趣味な母親が安っぽい自分の好みを押し付けて来るのも鬱陶しい、馴れ馴れしく話しかけて来る副担任にも、男子に媚を売る音楽教師にも苛立つ、「中二病」と言う言葉の真っ只中にいる中学二年生。
 事件を起こした「少年A」や「少女B」に心を寄せるアンは、ある日登校途中の河原で、クラスメイトの徳川勝利が血の滲んだビニール袋を蹴り飛ばしているのを見る。ネズミの死骸が入っているという彼に自分と共通の美意識を感じたアンは、思わず彼に依頼する。――「私を、殺してくれない?」
 ただの少年Aや少女Bで片づけられないような、センス溢れる殺し方。好きな人形の写真集の中の一枚のを真似た、一幅の絵のように美しく見立てられた殺人現場。場所は、衣装は、殺害方法は、殺した後の死体の処理は。こっそり逢瀬を重ねながら、お気に入りのノートに、二人は希望の殺し方、殺され方を書き綴る。
 友人たちは狭い世界で仲違いを繰り返し、とばっちりを受けてアンは教室でもクラブでも一人きりになる。馬鹿馬鹿しいと思いながらも友人たちの行動を突き放しきれず、無視されれば傷つくし話かけられれば嬉しい。そう感じる自分にも腹が立つし、悔しい。いずれ自分はこの世界から劇的にいなくなる、そう考えるだけで救われていたのに、徳川が言い放つ。――「本当に死ぬ気あんの?」「お前なんて、殺してやる価値もない」
 アンはいよいよ決行場所と方法を決める。…

 
 …ああ、痛いなぁ。反抗期真っ只中の主人公が痛いなぁ。でもこの痛みには多少覚えがある。
 紛うことなく「いけてない」グループ所属の私は、「イケてる」グループからの明らかにこちらを下に見た視線に気付いていて、だからと言ってそれを無視しきれず、とにかく居心地悪かったよなぁ、と小学校の高学年とか中学生の頃を思い出しました。高校生になったら仲間内以外はもうほとんど接点がなくなるので、随分ラクになりましたけどね~。
 辻村さん、よく描き出せるよなぁ。
 
    夢見ていないふり。特別だと思っていないふりをしなければならないほど、自分を疑いなく特別な
    存在だと思えるのは、何故なのか。

 …いや、そこまで裏を読むほどしっかりした中学生じゃなかったけど;;

    若さは恥の連続で、徳川はおそらくこの町に、それらをすべて置いていく。

 埋まりきらなかったノートの最後に描かれた絵には、ちょっとくるものがありました。
 あれだけ中学の頃の自分を支配していた友人達、芹香や倖ともまだつき合いがある、って凄いなぁ。それが辻村さんの優しさなんでしょうね。