読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ばんば憑き 宮部みゆき著 角川書店 2011年

 時代小説、連作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 坊主の壺
 江戸にコロリが流行った。田町に材木問屋を構える田屋の重蔵は、木置場を一つ空けて、お救い小屋を建てる。父母と兄、弟をコロリで亡くしたおつぎもそこに引き取られ、やはり同じ境遇の人達の世話を焼くうち、その働きが認められて田屋に女中奉公に上がることになった。ある日重蔵の掛け軸を見たおつぎは、その不思議な意匠に驚く。壺から入道の首が生えているような絵は、しかし他の人間には壺しか見えていないらしい。

 お文の影
 剛衛門長屋の左次郎という隠居は、長屋の子供の一人から相談を受けた。誰もいないのに小さな女の子の影だけが走っていたのだと言う。あちこち聞き回っているうちに、その長屋の前身が判明した。子供ができなかったお内儀がもらい子と共に大店を追い出され、その別邸で子供を苛め殺してしまったらしい。影遊びで一人遊んでいた少女の影だけが、成仏しそこねていた。

 博打眼
 醤油問屋近江屋の元に「あれ」がやってきた。何とか三番蔵に閉じ込めたものの、どう対処していいか分からない。手習いの帰り、娘のお美代に小さな八幡宮狛犬が話しかけてくる。登土岐訛りで喋る狛犬は、「あれ」――博打眼の退治法を教えると言う。近江屋は狛犬の助言に従って、目笊を背負った犬張り子を五十匹、集め始めた。

 討債鬼
 青野利一郎は師匠・加登新左衛門から手習所「深考塾」を受け継いで、近所の悪童を教えている。ある日、利一郎は松坂町の紙問屋「大之字屋」の番頭から、お店の一人息子・信太郎を斬ってくれ、と依頼をされた。驚いて仔細を聞くと、曰く、先日旅の坊主が現れて主人に、お前の息子はこの店への恨みからできた討債鬼だ、この先店に負債しかもたらさない、一刻も早く殺してしまった方がいい、と言ったとのこと。父親はお店の跡目争いで兄を差し置いて店を奪った自覚があり、まるっきり鵜呑みにしてしまった。利一郎は主人の近辺や坊主の素性を調べ始める。信太郎を護るため、一芝居打つことを企てる。
 
 ばんば憑き
 箱根での湯治からの帰り。雨に降り籠められた宿屋で、可愛い女房・お志津のわがままにつきあう佐一郎。だが相部屋を求められたことから、お志津の機嫌はますますひねくれて本性が見え隠れする。相部屋になった老女・お松は、自分の故郷の昔語りを始める。自分が仕えたお嬢さんが結婚することになったこと、相手の男に横恋慕した豪農の娘がお嬢さんを殺してしまったこと。その家では、その地方に伝わる<ばんば憑き>を決行することにする。亡者の魂を、殺した相手の身体に乗り移らせ、成り変わらせる秘法を行うことを。

 野槌の墓
 柳井源五郎右衛門の娘・加奈が、猫のタマが源五郎右衛門に頼みがあると言っている、と言い出した。タマは化け猫で、源五郎右衛門に物の怪を一匹、斬ってほしいのだとか。物の怪の正体は木槌の付喪神で、昔子供を殺す道具に使われたことがあると言う。先日折檻されて死んだ子供の亡骸を見て、昔を思い出して狂ってしまった。以来、通りがかりの人間を襲うようになってしまったとか。
 このままでは本当の化け物になってしまうその前に、と言う猫又の依頼を受けて、源五郎右衛門は腹を決める。化け物・野槌と共に子供の魂も成仏させようと。…

 うん、読み易い、面白い。
 宮部さんの作品はいいなぁ。
 政五郎親分やおでこ坊やもちらっと出て来ましたが、基本的には前の話に関係なくすらすら読めました。ちょっと怖い、不思議な話。いやなエピソードもあるのに、ちょっとだけ哀しさも残しながらも、後味はどの話もよくてほっとする。いや、『ばんば憑き』はあまりよくなかったけど。
 『博打眼』の、ぞろぞろ連れ立って出て来る犬張り子なんて、絵面で想像すると可愛いよなぁ、目笊の中に入ってるものはちょっと置いといて(笑)。
 相変わらず宮部さんの書く子供は可愛いです。