読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

先生の隠しごと~僕僕先生 仁木英之著 新潮社 2011年

 『僕僕先生』シリーズ5冊目。
 ええとですね、このお話を気に入っている方は、この先読まれない方がいいかもしれません、すみません;

 蚕嬢と茶風森の結婚を見届けて、僕僕一行は再び旅路へ。
 目指すはは西。どうやら僕僕は、蚕嬢たちの婚儀で辺境の国々の団結と漢民族への蜂起を説いた若者・ラクスに興味を引かれたらしい。行く先々で僕僕たちは、官軍により略奪の限りを尽くされた村を見る。たった一人の生き残りの少女・蒼芽香を一行に迎え、僕僕はさらに西へ。そうしてラクスの国・ラクシアに辿り着く。
 光の国・ラクシア。出自など関係ない、身分の差も徴税もない、規則は一つだけ、王・ラクスに従うこと。全てが平等で平和な国。王弁はどこか胡散臭さを感じずにいられなかったが、僕僕は何故かこの国を気に入った様子、ラクスと結婚するとまで言い出す始末。
 僕僕の目を覚まさせなければ。自分達を見張る複数の目を意識していた劉欣が動き、王弁にラクシアの郊外を見せる。そこにはラクシアにとって役立たない人間を排除する軍人や、銀山の労働に酷使される漢人たちの姿があった。
 銀山労働の劣悪な環境下、漢人たちは飢えと病に苦しみ、ラクシアへの反乱を企てていた。大きな犠牲が出るだろうそれを、何とか止めたい王弁。病の治療に当たって皆の信頼を得ながら時間を稼ぎ、ラクスの一番近くにいる僕僕を訪ねる。僕僕は天地開闢以来、僕僕の傍らにいた伴侶とラクスの理想を重ねていた。…

 着たい服と似合う服は違う、とふと思いました。
 作者が好きな世界、書きたい世界と本人との身の丈が合ってないんじゃないかなぁ。
 私個人の感想ですが、このシリーズに私はそんな壮大な物語は求めていない。「うわぁ、考えさせられるねぇ」って悲壮な世界も、「この人物が実は後の…」なんて展開も求めてない。僕僕先生と王弁の、ほんわりふわふわした成長譚が読みたいだけ。
 多分作者がしたいそういうお話にするには、登場人物みんな軽すぎる。
 例えば蒼芽香。ナウシカや『犬夜叉』の珊瑚が背負ったかのような彼女の重みは、後々全く生かされない。「そういう過去を背負った少女です」って設定だけになっている。王弁が感じるラクスの胡散臭さも私には今イチ伝わって来なかった。僕僕がラクスの理想に、最終的に乗っかれなかったところはどこなんでしょう。おそらく共産主義国家のような制度のラクシアの窮屈さも、着る服の派手さだけの問題か?とか思っちゃったし。いや、だって一般市民の具体的な不満エピソードは他になかったから(苦笑;)。王弁の治療はいやに効くし、ラクスの失脚も唐突だったしなぁ。
 僕僕先生にとって王弁は一瞬の旅の道連れ、楽しい旅の中にも哀しさがあるのは、王弁との時間の囚われ方の差。これでいいと思うんですが。…あ、でも王弁仙骨手に入れたんだっけ。これも使えないじゃん。