読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

サクリファイス 近藤史恵著 新潮社 2007年

 自転車ロードレースを舞台にしたミステリ。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 白石誓は日本ではマイナーな自転車ロードレースの選手。陸上トラック競技でインターハイ優勝してオリンピック候補生にまでなった経歴を持つ。だが、自分の勝利のために走ると言う行為にどうしても違和感が拭えず、自転車ロードレースの世界に飛び込む。この競技ではチームのエースの勝利の為に他のメンバーはアシストに徹する。この戦略に惹かれた為だ。
 富士山や伊豆の山岳コースを走るツール・ド・ジャポンで、白石の走りはスペインの名門チーム、サントス・カンタンの目に止まった。このまま気に入られたなら、ヨーロッパチームへの移籍もあり得る。白石の個人優勝もあるかもしれないというレース展開、同期の伊庭は狙うようけしかけるが、白石はチームのエース石尾のアシストに徹する。石尾のパンクに付添う白石に、チームメイトは石尾への不信感を吹き込む。
 ――石尾には気をつけろ、以前彼のエースの座を脅かした選手が、石尾にクラッシュさせられて、下半身不随の大事故にあったことがある。――
 その選手は、今は白石の初恋の彼女・初野香乃と付き合っていた。
 ベルギーの大会リエージュルクセンブルグで、白石は久しぶりに会った香乃からも、石尾に気をつけるよう忠告を受ける。エースを信じたい白石と、それを甘いと指摘する周囲。レースに入ってからも石尾の調子は今一つ上がらず、白石は絶好調。やがて、事故が起きた。石尾がクラッシュし、そのまま帰らぬ人となった。そして、白石にはサントスからスカウトが来た。
 石尾の死は単なる事故だったのか。事故時に現場にあった、石尾の水分補給用のボトルの重さに気付いた時、白石は石尾の真意に気付く。…
 
 あちこちで話題だった一作。
 …これは、究極の合理主義なのかも。
 感情を抑えて自分さえ客観的に見て、最上の手段を取る。結果を得るのは一人でいい、その代わり最高の結果を。今まで栄誉を受けて来た自分だからこそ。
 これ、題名凄いなぁ。読み終えてからずしんと来ますね。
 でもちょっとだけ不安なんですけどね、こういう考え方に少しでも誰か上の方の人の意思とか感情とかが入ると、カミカゼだの何だのの世界になってしまいそうなので。