読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

“文学少女”と繋がれた愚者(フール) 野村美月著 ファミ通文庫 2007年

 『文学少女』シリーズ三冊目。
 ネタばれになってます、すみません;

 ある日、遠子先輩が借りて来た図書館の本は、クライマックス部分が切り裂かれページが欠けていた。犯人を突き止めると息巻く遠子先輩、「ぼく」井上心葉はクラスメイトの芥川一詩が図書館の本を切り取る現場を見てしまう。
 芥川を問い詰める遠子先輩。何だかんだで文化祭にやる文芸部の芝居に、芥川を巻き込むことに。
 題材は武者小路実篤『友情』、脚色は当然心葉が担当。琴吹さん演じる杉子を巡って、杉子が恋する大宮に芥川、杉子にのぼせる野島に男装した遠子先輩。順調に進むかと思われた稽古は、心葉や芥川の思い出とリンクして、彼らの傷口を暴いて行く。
 芥川とつきあっているという更科さん、だが芥川はそれを否定する。弓道部の五十嵐先輩に殴られたり、切り裂かれたウサギを持っている現場を目撃されたり、挙句の果てに五十嵐先輩は彫刻刀で刺されてしまう。芥川には無理な筈なのに、芥川は自分がやった、と証言する。芥川には更科に対し、過去発生したいじめ問題で、自分が彼女を追い詰めた負い目があった。誤解が誤解を招いて更科は自殺未遂まで犯し、その姿は心葉には、朝倉美羽と重なった。
 文化祭当日まで安定しない心葉と芥川。心配した琴吹さんは熱を出して倒れる。急遽、琴吹のやる筈だったヒロインは遠子が代役し、心葉は主人公・野島を演じることに。台詞の一つ一つが心葉の心に突き刺さる。それは芥川にも同じことだった。…



 おお、何時の間にやら図書館に“文学少女”シリーズの続きが! どうして、うちの図書館は購入してくれないんじゃなかったの!? 驚きつつ、とりあえず予約を入れました。
 第三話の下敷きになっているのは武者小路実篤『友情』です。あ、これは読んだことがあるわ!と意気込んだのですが、…甘かった; 私、全然内容覚えて無かった;; …まぁいつものごとくちゃんと本文中で説明はしてくれるので、さして影響はなかったんですが、でもちょっと情けなかったですね(苦笑;)。

    どうせ、わたしたちは愚かなのだから、どんなときも、心に理想をかかげる愚か者であって。
 
 今回はもうこれにつきるでしょう、遠子先輩の劇中の台詞です。「それって理想じゃん、奇麗事じゃん」と思っていても、それでも心のどこかにそれは置いておかなければいけない。目指すべきものは捨ててはいけない。武者小路実篤の描く人間賛歌に、ここで繋がるのか、とちらっと思いました。
 相変わらずミスリードはされっぱなし、まぁこのシリーズで裏読みをする気は最初からなかったですけど、二転三転ありましたね。最後の最後でやっぱり驚いた。あの彼女、生きてたのか…!
 続きが楽しみです。