読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

さびしい女神~僕僕先生 仁木英之著 新潮社 2010年

 僕僕先生、シリーズ4作目。久々の長編。
 ネタばれになってます、すみません;

 僕僕一行は船に乗って南海に面した武安州へ。前回旅の仲間になった蚕嬢、引飛虎、推飛虎の生まれ故郷でもある。
 蚕嬢の本名は碧水晶、峰西の峰麓王・藍地銀の娘で、六合峰の神に捧げられた巫女である。その十二年のお勤めに我慢できず、「導神」として共に生活するよう選ばれた峰東の執政官の息子・茶風森を誘惑し、純潔を失うことで責務から逃れようと画策した。挙句、天罰下って蚕に変身、現在に至る。
 蚕嬢の逃亡は女神・魃の封印を解くことになり、故郷・峰麓は酷い旱魃に見舞われていた。魃はこの世の初め、天地創造時の神々の覇権争いで、最終兵器として生み出された旱の神。その至上最凶の力は戦が終われば忌み嫌われ、彼女を生み出した仲間の手によって六合峰に封じられていた。
 実際会って見れば、魃は寂しげな少女でしかない。僕僕の忠告も聞き入れず、王弁は魃の新しい居場所を探そうと吉良の背に乗る。司馬承禎の教えを受け、童子二人の導きを得て、王弁と吉良は西の彼方の星の群れ、奎宿のほとりを目指す。目的は古代、魃と相対した神・燭陰。今は駅車として働く燭陰に、魃の容れもののヒントを訊こうとするが、ようやく会えた燭陰は頑なに魃を否定する。さらに遠くに隠居するもう一人の古代神・耕父の元で、王弁は神々が殺しあう、凄まじい太古の記憶を垣間見る。
 結局魃の容れ物は見つからないまま、戻った六合峰の旱魃はもっと広がっていた。蚕嬢は、やはりふくろうに姿の変わった導神・茶風森の肝を捧げ、旱の被害を抑えようと考える。峰西・峰東両国民も諍っている場合ではない、と水の豊かな遠隔地から水を引いて来る。だが魃の前にはまさしく焼け石に水でしかない。魃の孤独を慰めようと王弁の吹いた哨吶は、却って魃の力を解放してしまう。
 何物も乾かして粉々になる力、旱。王弁をも襲うその前に、立ちはだかったのは僕僕だった。僕僕は拠比の剣を手に、魃と対峙する。その僕僕をさらに止めたのは王弁だった。…

 …茶風林さんって声優さんいるよな~。じゃなくて。
 いやいや、中華ファンタジーは漢字変換が大変です。
 うん、仁木さんの作品は、このシリーズは楽しく読める。ただ、あまり話が大きくなっちゃうと「…そこまで求めてないんだけどな…」とか思ってしまうのは、私がひねくれてるからなんでしょうね(苦笑;)。何のために出て来たのか分からないキャラクターもいましたし。
 己の力も顧みず、後先考えず突っ走ってヒーローなりヒロインなりに尻拭いさせる、ってのは私が最も嫌うパターンのお話でありまして。…今回、その傾向が色々見受けられたので、ちょっとイライラした所もありました(笑)。蚕嬢に対して、茶風森の肝を捧げるとか考える前にまず自分の肝を差し出せよ、とか思ってしまったのはきっと私だけではあるまい。いや、可愛いとかは思えませんわ、蚕嬢の行動は。
 ハッピーエンドだろうな、と予測はついてしまうのであまりどきどきはしませんでしたね、その分どうやって誰もが幸せになるような解決策を見つけるんだろう、って感じで。なのに王弁たら考えなしに哨吶吹いたりするし、人柄のよさで魃のハートは捕えたものの、結局解決は人任せな上にめでたしめでたしなラストじゃないし。帝江出て来なかったらどうなったことやら、ってのがちょっと残念でした。
 とりあえず、王弁は念願の仙骨を手に入れました。…そうなると、永遠を生きるものと短い生を送るものの共に過ごす時間、みたいなテーマはどうなるんでしょうね。
 それにしてもこの作者、天地創造好きだな~。どうか、他のお話と繋げたりしませんように。