読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

中学んとき 久保寺健彦著 角川書店 2009年

 「二三区でいちばん終わってる」ギリギリ東京の区立中学校に通う中学生を描いた短編集。

 純粋恋愛機械
 二月中学校にて。
 「ぼく」関根瑛次は卓球部。三年生になって永島朗と一年ぶりに同じクラスになった。永島はバレーボール部で、とにかくモテる。永島を目当てに湯浅縫子が近づいてきた。一緒に湯浅の友達・森川加奈とも仲良くなると、今度は森川目当てに鈴木英明が話しかけてくるようになった。そんな鈴木を追って本条未央も加わり、ぼくたちは6人で行動するようになった。やがて、ぼくは森川のことが気になり始める。幼いながら恋の鞘当て、駆け引きが横行し、ぼくはあちこちに翻弄される。…

     うぬぅ、名字ばっかりで誰が誰だかよくわからん; 


 逃げ出した夜
 三月中学校にて。
 男子バスケットボール部の夏休み合宿中、修は信輔と夜中抜け出してコンビニに行った。教師にばれて、喰らった罰則が「都大会出場停止」。結局都大会には出られることになったものの、他のバスケ部員との溝は埋まらないまま、修は周りから孤立して行く。ひきこもりだった先輩の講演も気に入らない、年上の彼女がキスより先に進んでくれないのも気に入らない、義理の母親も、再婚して変わってしまった父親も気に入らない、義理の妹だけは可愛いけれど。イライラをつのらせたまま、修は信輔と家出を決行する。だが頼りの信輔の決意はかなり甘いものだった。

     こういうひりつきや焦燥感は、一冊読んだきりだけど、藤沢周『オレンジ・アンド・タール』
     の方が上だったかな~。

 願いましては
 四月中学校にて。
 何の気もなくそろばんを習い始めて、吾郎はのぞみと知り合った。中三になってまでそろばん教室に通ってる奴はほとんどいない。のぞみには他校の溝口が声をかけてくるし、同じ塾に通っている陵太郎ものぞみに思いを寄せている様子。もやもやした気持ちを抱えたまま、学校では麻衣が吾郎をデートに誘う。一度のデートで即効振られたものの、あまりショックはない。思いは進路へ、のぞみへと彷徨う。

 ハードボイルドなあいつ
 五月中にて。
 一学年下の男子がいじめを苦にした自殺未遂を起こし、学校側の態度ががらりと変わった。結果、教師たちは生徒からなめられ、「おれ」青山京介のいる3年B組にも妙な派閥がうまれた。真っ先に「最下層」に位置付けられたのは鷹野。言動が変わっていて協調性のない鷹野はいかにもいじめてくださいと言わんばかり、エスカレートしていく嫌がらせにも独特の態度を崩さない。「ハードボイルド馬鹿」と徒名された彼を遠巻きに見ているだけだったが、サッカー部の引退試合が終わって状況が変わった。ターゲットに、青山が加わっていた。無視、匿名メール、暴力。鷹野の助力で、状況は変わらないながらも乗り越えられるかと思われた矢先、また新たな犠牲者が選ばれる。青山が密かに想いを寄せていた本間絵里だった。…

 『オープン・セサミ』までに久保寺さんの今までの著作を読んでしまおうキャンペーン、最後の一冊。…いや、読んでなかったのは二冊だけだったんですけど。
 最後の話がとにかく後味悪くてですね; 丁度似たようないじめがニュースで話題になった所だったこともあって、いや~な気分になりました。
 中学という、ある種閉ざされた時間・空間のお話。当然世界は狭く、心も視界も狭い。その分一途な世界。…ただこの作者、この時期あまりいい女の子とお付き合いしてなかったのかしら?? という疑問もちらちら。天使のようにいい子かどうしようもない小悪魔しか出てきてないような。そして「対象外」の女の子に対する視線の冷淡なこと!(笑)。こんなもんなんだね、と思わず苦笑してしまいました。
 すらすら読めるんだけど、やっぱり波長の合わなさは感じます。…『オープン・セサミ』、どんなもんなのかなぁ。