読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

私の家では何も起こらない 恩田陸著 メディアファクトリー 2010年

 連作短編集。

 私の家では何も起こらない
 丘の上の古い家に住む女流小説家。そこは幽霊屋敷なんだとか。今日も男が一人訪ねて来て、この家で過去に起きた数々の事件を勝手に話し、この家を幽霊屋敷にしたがる。私の家では何も起こらないと言うのに。

 私は風の音に耳を澄ます
 一日中働かされて母親から虐待を受けていた私は、ある日料理女に救われた。始めて優しくされて嬉しかった私。でも料理女は、性悪な私の弟も連れて来た。旦那様はゆでて冷たくした肉がお好き。料理女は旦那様のためありとあらゆる食材を集めている。

 我々は失敗しつつある
 私は名前も知らぬパブの中にいて、一人黒ビールを舐めていた。そこに三人連れが来て、幽霊屋敷の話を聞かせろと言う。私は少年の頃に入った、丘の上の家について語る。アップルパイの焼ける匂い、立ち尽くす大女。三人はそこに連れて行け、と言う。

 あたしたちは互いの影を踏む
 姉妹が台所でジャガイモの皮を剥きながらお喋りに興じている。漂うアップルパイの香り、幸せな気分に浸りながら過去を振り返る。こっそり小金を貯め込んでいた前の雇い主のこと、この頃街道筋で起きている連続殺人事件、床下から聞こえて来る子供の声、しまってもしまっても散らかっているリネン、横暴ですぐ暴力を振るった父親…。

 僕の可愛いお気に入り
 丘の上の屋敷の床下に、女の子が一人棲んでいる。腕にひどいやけどをした時、僕は君と知り合った。僕を苛めた三人の同級生は首を吊り、 僕は街道筋の一軒家を襲う。何かに見張られているような気がして、僕は君の側に行きたいと思う。

 奴らは夜に這ってくる
 かつて月の夜、「這うもの」の音を聞いたことがある。女が二人、髪を振り乱して這っていたのを月明かりの中で見た。でもあの音の正体は「這うもの」じゃない。あれは農場の伯父が常軌を逸して、伯母といとこを引きずっていた音。そして今夜も。

 素敵なあなた
 丘の上の家を案内する女。昔この家で起きた事件を一つ一つ説明する。攫われてきた子供が壜詰めになっていた台所、料理女の姉妹の事件、子供たちの肉を食べていた男がいた書斎、街道筋の老人を次々に殺していた少年が倒れていた裏口。そしてウサギの巣穴に足を取られてしまった「私」の話。

 俺と彼らと彼女たち
 丘の上の家を修繕するよう頼まれた大工。助手を頼んだビルは怯えて逃げてしまった。仕方なく隠居していた父親をつれて、見積もりに向かう。女流作家への引き渡し期限に間に合うように。

 私の家へようこそ
 丘の上の家で、作家は客を案内する。毎週末誰かお客が来ること、アップルパイが好きになったこと、ロッキングチェアに座っていると何だか喉が渇くこと。

 附記・われらの時代
 この文章を書いた作家についての言及。…

 「私の家では何も起こらない」――いや、十分色々起こってるやん。(笑)
 海外の翻訳もののような雰囲気。ちらちらと書かれていた出来事が、後々詳しく説明されていく趣向は何だか快感。…ホラーなんですけどね(笑)。
 もうこの家は憑いてるとしか言いようがないね、最後に住んでる作家さんも危なそうだし。時々時系列が「あれ、どっちが先??」と思うことはありましたけど、同じような事件がまた繰り返されてるってことなのかしら。最後に出てきた三人の子供の行方不明話とか。
 とりあえず、この屋敷を処分する時は炎で浄化して下さい。