読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

南の子供が夜いくところ 恒川光太郎著 角川書店 2010年

 連作短編集。

 南の子供が夜いくところ
 湘南の海水浴場で、タカシと両親はユナに会った。一家心中の是非についてしつこく話題にする母に、ユナは助力を申し出る。気がつくとタカシは両親と別れて、異国の島にいた。67人の子供たちと共同生活を送るタカシに、ユナは両親は他の島で働いている、いずれタカシを迎えに来る、と言う。

 紫焰樹の島
 「私」の生まれた島には、紫焰樹と呼ばれる樹木があった。選ばれた巫女しか見つけられないその木には毎年赤い実と白い実が成り、島の人々は赤い実しか口にしてはいけなかった。ある日流れ着いた英国人スティーブンは、島に様々な知恵をもたらす。湧水を汲み易くし、谷にロープを張り、台車を作る。島民に溶け込む彼をよそに、新たに流れ着いた彼の同郷人は、暴力と伝染病を持ちこんだ。島民が次々と倒れて行く中、「私」は禁断の白い果実を口にする。

 十字路のピンクの廟
 バオバブ街道の外れ、十字路のピンクの廟の中に、木像が祭られている。ジュノアさんの畑に空から降って来たのだとか。どうやら墓参りの日、魔神に取り憑かれたロブを救うため、クラスメイトの女の子たちが奮闘したらしい。でも女の子達はそのことについてなかなか語らない。

 雲の眠る海
 ペライアがコラに襲撃された。今までで最強の兵士を誇ったぺライアだったが、スペイン人が後ろ盾についたコラにはまるで歯が立たなかった。ぺライアの酋長の甥・シシマデウは島を抜け出し、伝説の〈大海蛇の一族〉を探して船出する。長い旅路の果て、シシマデウが辿り着いたのはタカシのいる島だった。

 蛸漁師
 セントマリー岬、廃墟のある断崖の中に、人が住める秘密部屋がある。「俺」は老人からその部屋を譲り受け、蛸漁の方法を教わった。俺の息子はその崖の下で見つかった。息子を突き落とした犯人は、息子のバイト先の同僚らしい。

 まどろみのティユルさん
 岩から浮き出ているティユルは、島の子供たちに会った後、自分の過去を思い出す。海賊船の船長であったこと、語学の堪能なソノバと出会い、「逆らう人間は殺せばいい」と思っていた価値観を揺るがされたこと、海賊をやめて平穏な生活を迎えたものの、何者かに夜襲をかけられたこと。そして今、背中に何か刺さった状態で、ティユルは今ここにいる。

 夜の果樹園
 タカシを迎えに行こうと、「私」はバスに乗った。ところが乗るバスを間違えたらしく、着いた所はフルーツタウン。フルーツ頭の人間ばかりの町で、私は犬になり、赤ひげに誘われて小鬼になり、桃頭の女の願いを叶えて一緒に暮らすようになり、自身はアボガド頭になって娘を設け、家族を殺されて再びバスに乗る。記憶の彼方にある息子・タカシに会うために。…

 連作になってると知らずに読み始めたため、二作目が繋がった時にはちょっと感動しました。
 どの話も、決してオリジナリティに溢れた、独創的な話と言うものではない。外国作家の短編とかにありそうなんですが、でもやっぱり好きなんだよなぁ。もうこれは好みだから仕方がない(笑)。
 どれも哀しくで、ほろ苦くて、でもどこか突き放してて、諦めみたいなものも漂ってて。うん、やっぱり好き。