読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ガーデン・ロスト 紅玉いづき著 メディアワークス文庫 2010年

 紅玉いづき、4作目。
 四人の放送部の少女の、高校三年生の一年間を描いた連作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 お人よしのエカ(江香)は偽善的なまでに優しい。クラスメイトの仕事を代わってやったり、文通相手の作った架空の男の子に恋をしてみせるほど。
 マルと呼ばれる加藤満は産まれ持っての可愛い容姿と声で、彼氏が途切れない毎日を送っている。でも実際は自分を抱きしめてくれる相手を求めているだけ。それは時に、却って自分を傷つけるだけだったけれど、最後には必ず手を繋いでくれるエカがいる。
 小津梨々花ことオズは、自分のあまりにも可愛らしい名前と、容姿のギャップに苦しんでいる。ひょろりと高い身長、ベリーショートの髪、学校でもセーラー服は着ずジャージで過ごす。そのきっかけは近所のエイ兄。幼い頃のスカート姿をからかわれてから。ベーシストになったエイ兄は、彼女と一緒に東京に行くのだと言う。
 柴奈保子、シバは母親の呪縛に苦しんでいる。学歴に拘る母親は、娘が「いい大学」に入ることを強く望んでいる。人の欠点を鋭い言葉で切り裂いていくシバ。エカの行動は事態を悪くするだけだと指摘し、マルの新しい恋を切り捨てる。返す刀で自分も傷つく。誰よりもエカに優しさに救われ、マルからの甘ったるい呼び声に癒されていたのは彼女だったのに。…
 
 表紙カバーが三色刷りだ、安く上げてるね~。…とか思ってしまいました。効果狙っただけなんでしょうけど。この頃はトンボ打ったり版分けしたりしないんでしょうね。(←また訳の解らないことを…・苦笑;)
 連想したのは吉田秋生桜の園』。特に第三話のオズの話で。桜庭一樹さんもちょっと思い出したかな。
 女の子の日常、学校と言う特別な楽園を描く。不思議な空間だよね、同じ年の少年少女が何十人も一か所に集められている狭い世界。その場にいる本人からしたら必ずしも楽園じゃないんだけど、でも思い返すと楽園だった気もする。閉鎖された、でも守られた空間。後から考えたら恥ずかしくなるようなこともして、全て置き去りにできる。

 私は、私達はいつも誰かの特別になりたい。
 叶うのなら、たくさんの中の、特別なひとりになりたい。ナンバーワンでもなければオンリーワンでもない。エスペシャリーな、ひとりに。

 …おお、槇原敬之全否定(笑)。
 誰かに、何かに救われるラストが哀しいような、嬉しいような。諦めや開き直りかもしれないけれど、そこからまた見つけ出せる道もあるから。
 彼女たちの未来が幸せの多いものでありますように。