読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

あるキング 伊坂幸太郎著 徳間書店 2009年

 王となることを運命づけられたある野球選手の話。

 山田王求が産まれたのは、南雲慎平太が死んだ日だった。南雲慎平太は万年最下位のプロ野球チーム・仙醍キングスの監督。選手時代は弱小球団に操を捧げ、引退後は誰も引き受けたがらない監督に就任し、しかしその最後の試合で東郷ジャイアンツにぼろ負けした上、ファール打球を頭に受けて死亡した。仙醍キングスの、南雲慎平太の熱烈なファンである山田亮・桐子夫妻は、その日に生まれた息子を南雲の生まれ変わりと信じて野球の英才教育を施す。持って生まれた素質もあって、王求の才能は伸びて行く。同じ年ごろの誰もが一線を引くくらいに。
 王求は周囲のある者には疎まれ、ある者には距離を置かれ、しかしある者には王に仕えることを喜びに思う従者のようにかしずかれる。王求の態度は変わらない。常に練習に打ちこむだけ。だが高校一年の時、高校を退学しなければならなくなる。父親の犯した犯罪が明るみに出たから。亮は当時中学生だった王求に暴力を振るった上級生を殺していた。
 人殺しの息子を暖かく見守る者はそうはいない。野球部を追われた王求は仙醍キングスのプロテストを受け、オーナーの気まぐれで合格、プロ野球選手となる。
 王求の成績は驚異的だった。桁違いの打率に誰も王求を称賛しない。それでも王求は打ち続ける。自軍の真面目すぎる監督に妬まれ、嫌われても打ち続ける。…

 これは賛否両論ありそうな作品だなぁ。何だか戸惑うばかり(笑)。
 人の想いと運命が絡み合う、卵が先か、鶏が先か…てのはちょっと違うか(苦笑;)。
 王求も両親も何だか超人的で、肩入れすると言うより一歩引いて淡々と読みました。バッティングセンターの津田さんとか、入院患者の倉知巳緒のエピソードとか、お父さんの呼びかけとか、もっと感動していい筈なんだけど、その辺りも黙々と読んでしまったなぁ。
 三人の魔女が言ってた「森が動かなければ」って意味に始め気付かず(←ばか;)、気付いた所で思ったのは「そりゃあの森は動くでしょう」。…本人のせいと言うよりお父さんのせいでしたね。
 伊坂さんでなければ書けない話でしたねぇ。…それにしてもこの装丁、いいなぁ。