読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

狼と香辛料Ⅹ  支倉凍砂著/文倉十イラスト  メディアワークス電撃文庫  2009年

 『狼と香辛料』シリーズ10冊目。
 ネタばれになってるかなぁ、すみません;

 ロレンス一行は海を渡って雪降りしきるウィンフィール王国へ。キーマン、エーブの後ろ盾を得て、世界最強と名高い経済同盟・ルウィック同盟のピアスキーを案内人に、『狼の骨』を持つと言うブロンデル大修道院へ向かう。
 ウィンフィール王国は羊毛が主要産物。ここ数年の不況と、ウィンフィール三代目国王スフォンの経済対策によってますます国力は衰え、修道院の経営状態も切羽詰まっている。そこに付け込んで、ルウィック同盟は修道院の土地を手にいれ、入植者を世話しようとしていた。故郷を失った人々に新しい故郷を斡旋する職業に、ピアスキーは誇りと喜びを抱いている様子。失われたかもしれない故郷・ヨイツに拘るホロはその発想に動揺する。
 ルウィック同盟の作成した修道院の財産目録を目当てに、ロレンス達は聖遺物の中から『狼の骨』を探そうとする。だが下手に見つけると、それはそれで修道院とルウィック同盟の綱引きに巻き込まれる可能性が高い。ホロの了承を得てウィンフィール王国を後にしようとした矢先、吹雪の中、老羊飼いハスキンズが現れる。彼はホロと同じ類の存在だった。
 月を狩る熊に故郷を追われ、仲間と何百年もかけて、ウィンフィール王国に新しい「帰る場所」を作ったハスキンズ。だがその地はまた失われようとしている。
 吹雪にまかれ、行き倒れた男が持っていたのは王の修道院への徴税通知だった。修道院に税金を払う余力はなく、修道院の後ろ盾を失えば羊飼い達の住処も無くなる。助けてくれと頼むハスキンズをロレンスもホロも無視できない。ロレンスは修道院が『狼の骨』を持っている可能性をピアスキーに打ち明ける。
 『狼の骨』は隠し財産であると同時に異端の象徴にもなる。それを担保に、修道院に商人たちと協力するよう圧力もかけられる筈。だが修道院は商人連盟の申し出を突っぱねる。修道院には国王に税金を払う余力があるらしい。
 そんな筈はない、と商人達の一部はいきり立つ。徴税の貨幣を運ぶ列を襲って、中身を検分すると言い出すが、これをして本当に貨幣が出て来たら、同盟は修道院と不利な取引をせざるを得なくなる。同盟に列を襲わせてはならない、だが中身は検めたい。ロレンスは最適の人物に思い当たる。…

 …面白かった! もしかしたらシリーズ中一番息をのんで読んだかも。
 相変わらずスロースターターですが、前半の悪貨のエピソードが後半の徴税に効いてきたり、伝説の黄金羊が伏線だったり、本当よくできてる。故郷を新しく作ると言う考えに動揺を隠せないホロ、慰め方がわからないロレンス、善良に言葉を紡ぐコル。そのために同族まで口にした、と語るハスキンズには胸が痛くなりました。
 相変わらず商人同士のやり取りは今いち着いて行けず(…;)、何でこれが駆け引き材料になるのかそこからどう発展してこういうことになったのか、理解しきれてはいないのですが(…;;)、今回どんでん返しも多かったしねぇ。
 ハスキンズから新しい情報を得て、ロレンスたちはまた旅立ちます。今度こそヨイツに向かうのかな。