読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

モノレールねこ 加納朋子著 文藝春秋 2006年

 短編集。

 モノレールねこ:
 そのねこは、デブで不細工で、ノラだった。塀の上に座って両脇に贅肉が垂れた様子は、まるで線路をしっかりはさんだモノレールのよう。
 お母さんの悲鳴もどこ吹く風、いつの間にやらサトルの家に居ついたデブねこは、客用座布団に穴をあけ、柱で爪をとぎ、取り入れた洗濯物の上で昼寝する。お母さんの花壇も駄目にして、とうとう遠く国道の向こうへ捨てられてしまった。所がいつの間にやらまた帰って来たデブねこには、赤い首輪が着いていた。首輪にメモをはさんでの、首輪の主との文通が始まる。でもその文通は長くは続かなかった。

 パズルの中の犬:
 まっ白いジグソーパズルをしながら夫の帰りを待つ「私」。やがて出来上がって行くパズルの中に、一匹の犬の姿を見るようになる。その犬は小さい頃、私とどこかで出会っていた。女手一つで育ててくれた母親と二人、父親を待っていた頃。その母も今では会う度に愚痴をこぼす憂鬱な相手。

 マイ・フーリッシュ・アンクル:
 海外旅行先の事故で、私・夏澄は両親と祖父母を一遍に亡くしてしまった。家に残されたのは叔父一人。30歳にして働きもせず、生活能力も無く、ずっと家にいっぱなしのダメ男・テツハル。その理由は遅れて来た絵はがきへの返事で明らかになった。…

  …いや、この理由でも、私は納得できないけどなぁ; この叔父さん、よく就職先あったよなぁ;;

 シンデレラのお城:
 30半ばを過ぎて、周囲は「私」鈴子に結婚、結婚とうるさい。居酒屋で知り合ったミノさんに偽装結婚がしたいと愚痴ると、ミノさんは話に乗って来てくれた。ミノさんは十年前に亡くなった婚約者・瑞樹と、一緒に暮らしていると言う。そのうち鈴子も、その気配を感じるようになる。ミノさんと瑞樹の間にできた子供の気配も。

 セイムタイム・ネクストイヤー:
 幼い一人娘を亡くした「私」。娘の誕生日や七五三で過ごしたホテルに泊まっていると、廊下に娘の姿が現れた。このホテルでは一年に一度、亡くなった人に会えると言う。死を望んでいた母親は一年後の予約を入れ、成長していく娘に会おうとする。
 
 ちょうちょう:
 来月に新規開店するラーメン屋の店長になった「俺」。アルバイトの女の子は好みのタイプど真ん中だし、店も行列ができるほどの人気で順風満帆。ところが態度の悪いチンピラを追い払ってから、逆風が吹き始めた。ネットでラーメンの悪口が書かれ、客足が途絶え始めた。

 ポトスの樹:
 俺の親父は碌でもないヤツで、子供の小遣いはくすねるわ幼児相手に本気でキャッチボールするわ、川で溺れていても助けないわ、カメラマンだと自称はしているがほぼ無収入で生活は妻に頼りっぱなし。なのに俺の奥さんとは何故か馬が合う様子。初孫もネコ可愛がり、孫の危機には文字通り、体を張って立ち向かう。…

   溺れてる我が子を助けないのは本人の価値観として、それで我が子が死んでたら、この人は
  どうするつもりだったんだろう。

 バルタン最期の日:
 「俺」はフータに釣られてしまったザリガニ。お父さんにバルタンと名付けられ、タッパーウエアで飼われ始めた。フータは何故か元気がなく、お父さんはこっそり俺に会社の愚痴をこぼす。その様子に気付いていたお母さんは駄洒落を飛ばし始めた。意を決して一家がディズニーランドに出かけた夜、空き巣がこの家を狙う。俺はこの家を守ろうとする。…

 加納さんの短編集、というだけで連作だと思い込んでました。ありゃ、本当に短編集だった(苦笑;)。
 察しがついちゃうものもありましたが、どれも暖かく切なくほろりと泣ける話ばかり。でもやっぱり夏澄の叔父さんとか『ポトスの樹』のお父さんとかハラ立つんですけどね、いい加減大人になれやげしげし、ってなもんで。結局羨ましいんだろうな~。
 菊池健さんのイラストも可愛い一冊でした。