読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

なみだ学習塾をよろしく! 鯨統一郎著 祥伝社ノン・ノベル 2007年

 サイコセラピスト探偵波田煌子シリーズ、三作目。

 第1限 路線図と涙:
 元心理カウンセラー、警視庁のプロファイラー経験もある波田煌子が今度は学習塾の事務員に就職。経営者で教師でもある波田信人は、煌子をある時は鬱陶しく思いながらも、彼女のペースに引き込まれて行く。
 中三クラスの相羽大輝は鉄道好き。おとなしいが特に問題のない生徒だったのに、ある日母親から、大輝が行方不明になったと連絡が入る。携帯電話から入るメールでは今いると言う場所が次々報告されて来るが、そこに住んでいる親戚の元には行っていないらしい。広尾、新宿、信濃町、港区、本郷、府中、国分寺、小平。大輝は一体どこにいるのか、煎茶とポム・フリットを食べながら、波田煌子が推理する。

 第2限 相似形と涙:
 本山恵利子は携帯が欲しいが、親は許してくれない。彼女が気になる佐藤優成は恵利子の家に電話をかけて告白するが、振られてしまった。ショックで成績が落ちる優成。だが恵利子は、優成の成績が落ちるようなことに心当たりはないと言う。番茶とドライフルーツの揚げパイを片手に、波田煌子が二人の誤解を解く。

 第3限 清少納言と涙:
 ヤンキーの深町純の、古文の成績が上がって来た。本人が真面目に勉強しているからなのに、通っている猿楽中の教師は信用しない。あろうことか、隣のクラスの国語の成績が落ちて来たことさえ、深町が何か邪魔しているせいではないかと疑う。深町と同じクラスの豊瀬加奈子の相談を受けて、ほうじ茶とマンゴープリンを頬張りながら、波田煌子がその原因を突き止める。

 第4限 疑問詞と涙:
 豊瀬加奈子の住む団地で小火騒ぎがあり、同じ中学に通う堀美由紀、明野憲子共々遅刻した。担任教師から今度英語の小テストを行うことを他の二人に知らせてくれ、と頼まれた加奈子。ちゃんと掲示板に書き込んだのに、二人とも知らないと言う。いじめにまで発展しそうな雰囲気に、加奈子はいたたまれない。烏龍茶とネギ餅をお茶請けに、波田煌子が真相を見抜く。

 第5限 月の満ち欠けと涙:
 今来栖幸夫の趣味はマジック。通っている代官山中学でもマジック部に所属、合宿中に顧問教師や部員を自宅のマンションに連れて来て新作マジックを披露する。エレベーターから消失する今来栖に感心する部員たち。だがその話を聞いて、波田煌子は青ざめる。玄米茶と杏仁豆腐を前に、煌子はマジックの種とそれに隠された企みを暴く。

 第6限 確率と涙:
 転校生・風野光太郎は嘘ばかり吐いているらしい。曰く、アメリカまで一時間で行けるとかオスの三毛猫を飼っているとか。中目黒の駅で本を読んでいた美女が自由が丘のベンチでやはり本を読んでいた、老人ホームに女子大生がいた、虎が空を飛んでいた、道のないところから車が飛び出して来た。誰も信じてくれない、と嘆く風野。宇宙旅行に出かける、と言い置いて去って行く。抹茶と和三盆クッキーを食べながら話を聞いていた波田煌子は風野の命が危ない、と慌てふためく。

 第7限 基本的人権と涙:
 高校受験を前に、煌子の用意した玉露とココナツ団子に舌鼓を打ちながら、波田信人は最後の試験問題を作った。成績優秀者は勿論、悪い者にもある程度点が取れて自信が付くような、授業中に話した雑学も含めた問題。いざ実施してみると、生徒29人全員が皆83点になってしまった。カンニング疑惑も起きる中、お茶をふるまいながら波田煌子が謎を解く。…

 これも「空腹小説」(©チルネコさん)だよなぁ、と思いつつ。
 もうね、答えが分かっちゃうような話もある訳ですよ。煌子さんもちょっとムッとする所は相変わらずだし、新メンバーの先生たちの披露する推理合戦はとんちんかんもいいところ。でもいいや、楽しいから(笑)。煌子さん、とうとうお茶請け手作りしてるし。また転職するんですね~。
 いやぁ、気軽にするする読めました。面白かった♪