読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ファミリーポートレイト 桜庭一樹著 講談社 2008年

 ネタばれと言うか、あらすじほとんど書いてます、すみません;

 ママの名前は、マコ。
 マコの娘は、コマコ。
 マコは、コマコの神。
 あたしはいつまでもいつまでも狂ったようにママだけを愛していた。

 「あたし」コマコの一番古い記憶はコーエー住宅。5歳までそこにママと一緒に暮らしていたが、二階へ続く急な螺旋階段から赤黒い液体が落ちて来て、ママと逃げることになる。
 5歳の一年間は山奥の寒村で過ごした。年寄りばかりがいる村で、やはり年寄りのお医者さんと看護婦さんのいる診療所に泊まり込んだ。ママは診療所で受付をして働き、やがて村役場で働く唯一の青年・要に彼女の「真紅」を与えるようになる。喋れないコマコは要から文字を教わり、本を読む楽しみを知る。マコは要の子を孕み、村人たちは旅人の二人を祝福するが、マコは双頭の子を流産。コマコへの虐待も判明し、マコはだんだん村に居辛くなって行く。マコとコマコが村の外へ出ている間に村は雪崩にのまれ、二人は再び旅に出る。
 6歳から10歳まで、海辺の温泉街で過ごした。マコは温泉芸者として体を売り、コマコはやはり母親が温泉芸者の少年・解と友達になる。相変わらず言葉は喋れないまま、小学校にも行っていない。高校生たちの間に流行る自殺、この街に伝わる葬式婚礼の風習。雇われたマコに代わって、死者として初夜を迎えた死者の姉は、新郎役の相手を刺し殺した上自殺する。丁度マコを捜す男が現れたこともあって、マコとコマコは再び街を出る。
 十歳から13歳まで、豚の屠殺場のある町にいた。屠殺場を中心に回る町の中、マコは暴力を振るわれながら社長と交尾をする。コマコも社長にののしられ、人としての誇りを失っていく。マコの苦しみを引き受けながらも生理を迎え女になって、マコに髪を切られて男のようになって、それでもマコが好きで、図書館で架空の舞台を踏む。二人を捜して来た探偵を社長が殺し、マコとコマコはまたこの町を出る。コマコは初めて言葉を話す。
 13歳の一年は、ゆったりした歴史のある土地で過ごした。マコは洋裁で生計を立て、コマコは伸びた身長をいいことに18歳と嘘をついて、古本屋に寄りつつ大家さんに家賃を払いに行く。盲目の大家さんにほのかに想いを寄せながら、でもここにも二人を捜す追手が来て、また列車に乗る。
 14歳、<隠遁者募集>の広告を見て、広いお屋敷にやって来た。そのフランス式庭園に住むことが仕事の内容。屋敷の中の書庫で物語に耽り、雇い主の訳の分からない授業を受けながら、夜になるとコマコはマコに殴られる。そして夜毎マコに銃で撃たれる悪夢に悩まされる。
 やがて二人を捜す男はここにも現れて、マコは冬の湖に身を投げる。コマコは置いてけぼりにされてしまった。
 二人を捜していたのは駒子の父親だった。理想的な家庭を持つ父は文学者で、妻も二人の子供もいるのに駒子を引き取る。だが駒子はそこに安住できず、誰でも入れる都立高校に潜り込む。図書室に入り浸り、バンド少年と付き合う。マコのような真紅ではなく、自分の中のうす青い空洞を知る。餓え溺れるように学校中の女の子と寝る。落語研究会の男の子と知り合い、「語り」を聞くことを覚える。
 卒業後は父親の伝手で文壇バーで働く。常連の編集者に導かれ、やがて嘘を語る術を身に着ける。自分の身の上を削るように物語をかたり、それが高じて母の名をペンネームに背負い小説家としてデビューする。腹違いの弟に母親もろとも侮辱され、暴力で報復する。そのまま弟は社会性を無くして自殺未遂を起こす。駒子は自分が天に振りかざしていたつもりの刃が他人を傷つけていたことを知り、筆を折って出奔する。
 住み込みの喫茶店のバイトで29歳まで過ごした。教師の真田と知り合い、付き合う。父親への抵抗としてポルノスターになった金田霞が転がり込んでくる。霞が撮っていたセルフポートレイトに駒子が写り込んでいたことから、駒子は編集者に居場所を突き止められ連れ戻される。それは霞が焼身自殺した日でもあった。
 また過去を削って物語をかたり始める駒子。有名な賞も受けて順風満帆に見えるが、真田は理解しにくい様子。駒子の中では、眞子が穏やかに溶け込むようになっていた。…

 桜庭さん、ドラマの『夢千代日記』見てたんだろうなぁ、温泉芸者の辺りは金魚さんを思い出しました。受賞後の騒がしさは、ご本人の経験が多分に入ってるんでしょうね。
 眞子があんなに早く死ななければ、駒子はもうちょっと楽だったろうに。駒子がちゃんと眞子に感情をぶつけることができるようになるまで生きていれば。代わりに自分を痛めつける様子が辛い。
 母親からの自立と言うのはこんなにも大変なものなのか。エッセイとかから見ると、桜庭さん自身のお母様は、娘のごはんの心配したり、編集さんに「ちゃんと育ってますでしょうか」と尋ねたり、とても微笑ましいんですが。自立と言う面だけから言うと、反りが合わない母親との方が楽なのかもしれない。愛情を与えられる方が縛られるのかも。…いや、勿論創作として区別するべきなんでしょうけど。
 ラストシーンがとにかく印象的でした。女優の卵として前途有望だった頃の眞子のエピソードがこんな風に使われるとは。自分と母親との最初のファミリーポートレイト。でも父親は存在しない。
 …あらすじ書くだけで疲れた作品でした(笑)。