読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

十二の嘘と十二の真実 あさのあつこ著 徳間書店 2007年

 表題作と、短編一本収録。
 
 『十二の嘘と十二の真実』:
 浮気症の王は次から次へと女に手を出し、皇子を産んだ后は自分の容色の衰えを感じながら嫉妬に狂っている。后に侍女・ツルが囁く、后の思うようにすればいいのです、と。命じて下されば私が全て手を汚しましょう。后は王の子を孕んだ女を次々に殺して行く。后はツルが囁くまま贅沢をし、諫言した公爵一家を処刑し、王まで殺して国を手に入れるが、飢えた民衆が城に押し寄せる。炎上する城の中、皇子を探す后は、皇子の揺り籠の前に立つツルを見つける。

20年前、山の中で出会った少年は、数日前行方不明になった少年とよく似ている。
肉屋の親爺が若い娘を嫁に貰った。嫁は浮気をした後姿を消し、その年の祭で肉屋は肉の佃煮をふるまう。
幼い頃母親と住み込みで働いていたお屋敷のお嬢様は、病弱で寝たきりだった。お嬢様にとってたった一人の話し相手だった私は、学校へ行くようになってお嬢様と離れていく。おもちゃの電話でお話をせがむお嬢様を、私は疎ましく思ってしまう。
裏山のお社に奉納された鏡に、赤いセーターの女が映ると言う。女が首を絞められ、殺されている所だとか。
隣町で独り暮らしの老人が殺された上、火が付けられた。警官が訪ねて来た時、私の家には友達が来ていた。
鴻山さんの家に十歳くらいの女の子の幽霊が出るとかで、酷く怯えている。鴻山さんは小さい頃からお金持ちだが意地の悪い女の子だった。
クリーニング屋の男の後ろに、女の姿が見える話。
呆けた母親を施設に入れようとする息子夫婦。挨拶に来た二人に、母親は人面瘡に乗っ取られたのだと語る。
医者にかかった私。医者の背中に女の子が見える。この医者はかつて、成績のいい同級生を殺したらしい。
医者に刺された私。薄れ行く意識の中、私は人面瘡になって医者にとり憑く。
滅びた国の話をしてくれた老夫人・吉野さん。OLの「わたし」は職場の同僚・美知と彼女の家に通う。「ツル」の話を聞くうち、わたしは意地の悪い美知を食べたくなって…。

 
 『崖の上』:
 狼に育てられた少年と、未知の生物を研究する学者の娘が出会う。人間に捕まった少年は少女と共に逃げるが、少女は追手に銃で撃たれ、少年は狼の群れから追われる。…

 あさのさんのホラー。どちらも食人がテーマと言うか、何と言うか…。
 表題作は、飢饉にみまわれたある国の話と、一人暮らしの老女が語る話がかわるがわる語られます。最後には一つに繋がる訳ですね。
 何となく岩井志摩子さんを思い出しました。あ、手塚治虫も。…これは後半人面瘡が出て来たせいだな(笑)。禁忌にエロスも入ってる感じ。あまり後味はよくありませんが(当たり前だ・笑)、するすると読めました。