読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

子どもの王様 殊能将之著 講談社ミステリーランド 2003年

 ショウタの親友・トモヤはよくつくり話をする。二人が住んでいるカエデが丘団地の外は夜には何もなくなっていると言ったり、4号館のコウダさんや7号館のイナムラさんは魔女だと言ったり。今日は子どもの国を支配している王様「子どもの王様」の話をした。言うことを聞かない子どもを殴ったり蹴ったりする「子どもの王様」。トレーナーにジーンズ、不精ひげを生やしているという「王様」の姿を、ショウタは学校帰りに見てしまう。
 面白がってトモヤにその話をすると、トモヤは発作を起こすほどおびえてしまった。どうやらトモヤは「子どもの王様」に狙われているらしい。トモヤを守るため、団地の案内板に細工をするショウタ。ちょっとした悪戯気分だったのに、実際イナムラさんが「子どもの王様」らしき人物に襲われたと聞いて、ショウタの心も重くなってくる。
 トモヤを守るのはぼくしかいない。ショウタは毎晩、水商売をしているトモヤの母親が帰って来るまで、トモヤの眠る17号館に近付く者を見張るようになる。徹夜続きで体力も尽きて来たある真夜中、また「子どもの王様」がやって来て、トモヤの母親と言い争う様子を見てしまう。トモヤのお母さんは「子どもの王様」に暴力を振るわれて大怪我を負った。次に襲われるのはトモヤだ。ショウタは自慢のマウンテンバイクをこいで、トモヤに危機を知らせに走る。トモヤを逃がして110番をした所で、部屋に「子どもの王様」が現れた。暗い中、ショウタをトモヤと勘違いしているようだ。ショウタは子どもの王様と戦う決意をする。…

 殊能さんの作品を読むのは初めてです。
 …面白かった。
 魔法に満ちた現実世界、口やかましいお婆さんも呆けの来たお婆さんも魔女に見えた頃。学校の友達といじめにも似た遊びをして、大人が顔を顰める様な人気のお笑い番組の話題で盛り上がり、土曜朝の戦隊番組「神聖騎士パルジファル」を本気で応援する。
 大人が聖人君子でないことも分かり始めていて、大人になんかなりたくないと思い、でも最後には「大人になる」決意をする。…何か凄く身に覚えがある世界でした。
 作者は1964年生まれと言うことで、恩田さんも確か同い年でしたよね。この辺りの年代の人は、ノスタルジー書くの上手いのかな。
 かなりほろ苦い後味。推理小説ではないかもしれないけど、この身近な「子どもの王様」は怖い。
 ただ、子供が読んでも面白いかは微妙。子供にはもうちょっとちゃんとした大人の姿を見せたい気がするし、読ませたら読ませたで下手すると本気で怯えそうな気がするし。