読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

妃は船を沈める 有栖川有栖著 光文社 2008年

 社会人アリスシリーズ 、中編二つを繋げた長編。
 多少のネタばれあります、出たばかりの本ですみません;

 第一部 猿の左手
 大阪港第四突堤から、一台の車が運転手もろとも海に落ちた。運転手・盆野和憲に巨額の保険金が掛かっていたこと、体内から睡眠薬が検出されたことから殺人の疑いがかかる。容疑者は第一に妻・古都美、第二に借金していた相手・三松妃沙子。
 盆野古都美は催眠を利用したダイエットで成功を収めていた。事業に手を出しては失敗していた夫との間は冷え切っていたが、アリバイはしっかりしている。
 三松妃沙子は生命保険のセールスレディとして金を稼いだ後、投資に成功して悠々自適の生活を送っていた。貧乏暮しをしている若い男の子を家に呼んではもてなすような毎日、生活に困っていないので借金の返済を迫ることもなかったと言う。足も不自由なので犯行は無理、今一緒に暮らしている青年は小さい頃のトラウマで泳ぐこともできない。ただ彼女は、願い事を三回叶えてくれる「猿の手」を持っていると言う。

 幕間
 第一部で訪れたレストランを再びたずねるアリス。

 第二部 残酷な揺り籠
 震度6地震に襲われた時、殺人事件が起きていた。川西市の設楽邸の離れに居候していた青年・加藤廉が、近距離から二発撃たれて死んでいた。部屋の合い鍵は合計三つ、本人と元恋人が一つずつ、母屋に一つ。だが母屋の鍵はサイドボードの裏に落したまま。
 容疑者にされた元彼女には地震のため、怪我をして地下室に閉じ込められていたアリバイがあり、母屋の夫婦は犯行時、何者かに贈られた睡眠薬入りのワインを飲んで眠り込んでいた。調べが進んで行くうち、ワインを贈ったのは加藤廉本人だったことが分かる。
 フィールドワークに設楽邸を訪れた火村とアリスの目の前に現れたのは、車椅子に乗った妃沙子だった。…

 第一部の方は、トリック察しがついてしまいました。…って読んだ人ほとんど分かっただろうなぁ。
 第二部の方も、犯人が誰かはもう既定。何故、どうやってこうなったのかがメインですね。
 モチーフになっているウィリアム・W・ジェイコブズの『猿の手』の短編は、読んだことあるようなないような…。でも多分、普通に怪奇小説として読んだだろうなぁ。本格推理作家さんと言うのは、凄い読み方をするものだわ、と感心しました。確かにそうとも見えるのが凄い。
 帯の惹句「臨床犯罪学者・火村英生、かつてない強敵と対峙す!」ってのは首を傾げました。…かつてない強敵、かなぁ。いや、面白かったんですけどね。