読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

武士道セブンティーン 誉田哲也著 2008年 文藝春秋

 『武士道シックスティーン』の続編。
 ネタばれと言うか、粗筋ほとんど書いてます、すみません;

 福岡に転校した西荻(甲本)早苗も磯山香織も二年生に進級した。
 香織は東松学園で新一年生を迎え、愛校心も湧いてくる。早苗が抜けたことで戦力不足は否めないが、後輩・田原美緒も慕って来て、煩く思いながらも面倒を見てやる日々。偶然出会った中学時の同級生・清水が苛められていたのを助けてやったら、彼女と名乗ってくれ、と馬鹿なことをお願いされたり。
 早苗は、剣道の名門校・福岡南高校へ編入した。実績を問われ、磯山香織に勝ったことがある、と監督に言ったことからスポーツ推薦待遇に。女子だけでも50人以上いる部員の中、人懐っこい同級生・黒岩伶那とはすぐ仲良くなった。だが練習の方法も説明も満足にはして貰えず、顧問の吉野先生は酒臭い息を吐きかけ、「甲本」の名を「河本」にしろ、と無茶を言うような有様。剣道を武道ではなくスポーツと捕え、勝つことに拘る方針に疑問を抱く。団体戦の次鋒に抜擢されたのも磯山香織対策だと分かり、ますます福岡南の剣道から心が遠退いて行く。
 8月、インターハイで早苗は香織と再会。香織は個人三位入賞。早苗は団体優勝だが嬉しくない。剣道が楽しくなくなっていた早苗は東松学園の剣道を見て、自分が目指す剣道はあちらに近い、との思いを強くする。
 香織には浮かない顔の早苗が気にかかるが、どうしてかは分からない。道具屋のたつじいや兄にアドバイスされ、早苗を横浜市民秋季剣道大会に誘う。その機会に、香織の恩師・桐谷道場にも足を運ぶ早苗。桐谷玄明先生に稽古をつけて貰い、多くの事を学ぶ。
 父親の東京での仕事が増えそうだと聞き、また東松に戻りたいと思う早苗。だが香織には伶那に負けたまま帰ってくるな、と言われてしまう。普通には勝てない、と言う早苗に、香織は防具なしでの決闘を提案、早苗は伶那に果たし状を書く。
 一方香織は、清水を苛めていた不良連中と相対することに。警察官である父親が酔っ払いを助けて大怪我したことも教訓に、香織は自分の武士道を自覚して行く。…

 今年のオリンピックで「柔道がスポーツになってしまった」と嘆く声がよく聞かれたのを思い出しました。武道はあくまで人格修養、勝ち負けだけに拘るものではなく戦を収めるもの。香織と早苗とレナとの三角関係(?)の中、三者三様に成長して行くのが気持ちよかったです。
 桐谷道場に冷房が付いた時の先生の台詞「もはや……限界だ」には思わず吹き出しました。果たし状を書くのにネットで検索する早苗にも笑ったなぁ(笑)。前作では悪役気味だった桐谷先生や早苗のお姉ちゃんにも見せ場を用意していて、凄く好感が持てました。
 「本当に正しい論理っていうのは、誰にでも簡単に、すっ、て、納得できるものなんだって」。DNA構造を解明した生化学者が、これで間違いない、と思ったのが似たような理由からだった筈です。二重らせんの構造がとにかく美しかったからだ、って。受け売りですけど(笑)。
 これ、『武士道エイティーン』もあるのかなぁ。どう続けるんだろう、楽しみです。