読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

愛の旅立ち フランバーズ屋敷の人びと1  K.M.ペイトン著/掛川恭子訳  岩波少年文庫  1981年

 英国での初出は1967年。
 粗筋ほとんど書いてます、すみません;

 1908年、12歳の孤児クリスチナ・パーソンズはフランバーズ屋敷に引き取られて来た。
 おじの地主ラッセルは、21歳になれば父親の莫大な財産を相続するクリスチナを、長男マークといずれ結婚させようと目論んでいた。
 マークは父親にそっくり、昔ながらの地主生活を謳歌し、狩猟を愛し、使用人よりも馬を大切にする傲慢な性格。癇癪持ちで乱暴で弱い者への配慮を思いもしない、しかし溢れるパワーは人を惹きつける父親のお気に入り。
 対照的に弟のウィリアムは、目の前で父親が落馬し、不具になったのを見たためか狩猟も乗馬も大嫌い。足の骨を折ったのを幸い、わざと治りきらないうちに無茶をして、馬に乗れない状況を自分で作ってしまった。時代はまさに人間が空を飛び始めた世界、旧弊な父や兄に愛想を尽かし、大好きな飛行機の世界に耽っている。
 フランバーズ屋敷でクリスチナは乗馬の楽しみを知る。彼女に乗馬を教えたのは馬丁のディック。5歳で両親を亡くして以来甘える対象、優しくされる相手を知らなかったクリスチナは、急速にディックに惹かれて行く。だが階級意識の抜けきらないクリスチナは、その恋心に自分で気が付かない。ディックが首になって初めて、ディックの存在の大きさを思い知る。しかもその原因――マークに乗り潰された愛馬スイートブライアーを助けて欲しいと頼んだのはクリスチナだった。
 ディックを庇い切れないクリスチナ、鞭で打たれるウィリアム。いよいよウィルはフランバーズ屋敷を見切り、近所に住むダーモット家に入り浸り、飛行機の製作に没頭する。フランバーズ屋敷とは全く違う生き生きとしたウィルに驚くクリスチナ。クロスカントリー・レースの日に飛行機の試乗をしたウィルは会場にそのまま突っ込んでしまい、父親から勘当を言い渡される。
 屋敷を出て行くウィリアム。この乱暴な人たちのいる所で自分はこれから暮していくのか。クリスチナを狩猟舞踏会にエスコートするため戻って来たウィリアムと共に、クリスチナは屋敷を後にする。馬ではなく、自動車に乗って。…

 荻原規子さんの『ファンタジーのDNA』で紹介されていた作品。
 いやぁ、こっぱずかしい題名ですね、いざ打ち込むまで気が付きませんでしたが(苦笑;)。
 雰囲気なんだか『嵐が丘』や『ジェイン・エア』(読んだことないけど;)。あと『風と共に去りぬ』もかな(これは読んでます)。でも描かれるのは一途な愛ではなく、三人の男性に揺れる少女の姿。「あなたに恋したことなんかない」と言い切るけど、マークに色目を使う小間使い・バイオレットに不愉快になる。ディックに惹かれながら、結局ウィリアムを選ぶ。リアルではあるんだけど好感は持ちにくいなぁ(笑)。
 全4巻のシリーズものらしいんですが、この巻の訳者あとがきで全てネタばれしてるのはどうなんでしょう; どうせなら最終巻でネタばれして欲しかったなぁ;;