読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

看守眼 横山秀夫著 新潮社 2004年

 短編集。
 ネタばれになってる気がします、すみません;

 『看守眼』
 R県警本部庁舎で県警の機関誌『R警人』を編集する山名悦子。この春定年退職する警察官と事務職員の回想手記を載せる筈だったが、うち一人・近藤宮男の原稿がない。締切の迫る中、悦子は近藤の家を訪ねる。刑事に憧れながら看守として勤め上げた近藤。定年を間近に迎え、迷宮入りしかけている事件を独自に追っているという。不倫相手の人妻を手にかけながら、死体が見つからないのをいいことに、証拠不十分で釈放された男の事件。しかも夫は釈放された容疑者を殺そうとして返り討ちにあっていた。近藤は刑事眼ならぬ看守眼で隠された真相を見抜く。
 
 『自伝』
 兵藤電機会長、兵藤興三郎の自伝を依頼された。筆記者・只野正幸に兵藤は、自分は30年近く前、愛する女を手に掛けた、と告げる。只野の中に、自分と妹を捨ててある日突然いなくなった母親の姿が思い浮かぶ。この奇妙な一致は偶然か、それとも…。

 『口癖』
 関根ゆき江は家裁の家事調停委員。ある日担当した離婚調停で、当事者・菊田好美が自分の娘の同級生だったことに気付く。娘は高校時代に登校拒否状態だったことがあり、その原因は言わないものの、好美が関係していることにゆき江は気付いていた。今は幸せな結婚をしている娘と引き換え、離婚を申し立てている好美を意地悪い気持ちで見つめるゆき江。だが、好美は当時の事実をぶちまける。

 『午前五時の侵入者』
 警察官・立原義之はM県警のホームページを担当している。午前五時、自宅でホームページを確認した立原は、県警のホームページがクラッカーに滅茶苦茶に書き換えられてしまったことに気付く。揉み消しに走る立原。その姿が上層部の不興を買う。クラッカーを突き止めるため、立原は書き換え画面にあったフランス語らしき言葉を翻訳できる人物を探す。

 『静かな家』
 高梨透は県民新報整理部に勤める記者。地域版の記事を急ぎ差し替えているうち、個人写真展開催の日程を間違えてしまう。開催場所のギャラリーに謝罪に向かう高梨。経営者は笑って許してくれたが、写真家の須貝は電話で怒鳴り込んできた。その十日後、須貝が死体で見つかる。どうやら最後に言葉を交わしたのは高梨らしい。

 『秘書課の男』
 倉内忠信は秘書として知事のため身を粉にして働いている。だがこの頃、知事の信頼は若いスタッフ・桂木敏一に向いている。倉内は知事の機嫌を損ねるような何をしたのか。思い当たるのは中小企業の社長からの資金繰りの依頼を、少額しか貸せないと断ったこと。人情派の知事に、誰がどう言う経路でその情報を入れたのか。…

 横山さんお得意、警察官や記者を主人公に据えた短編集。
 東野さん、横山さんと続けて短編集を読みました。作家の個性がはっきり出るなぁ、と感心することしきり。東野さんの作品が、どちらかと言うと欲望みたいなものが犯行原因になるのに対して、横山さんの作品は悲哀と言うか切なさと言うか、感情がメインになってる感じ。アンハッピーエンドでも、横山さんの作品の方が後味がいい。…というか、これは私の好みの問題ですね(笑)。それにしても横山さん、ハズレがないなぁ。