読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎著 新潮社 2007年

 2008年本屋大賞、第21回山本周五郎賞受賞作品。
 ネタばれになるかもなぁ、ごめんなさい;

 若き首相・金田貞義が仙台市をパレード中に殺された。ラジコンヘリによる爆死。
 容疑者として青柳雅春の名が上がった。ただし、青柳は犯人ではない。
 その日、青柳は大学時代の友人・森田森吾に呼び出された。森田は妻の借金のカタに、青柳をこの場所へ連れてくるようとある人物に命令された、と言い出す。二人が乗った車には爆弾が積まれていた。「逃げろ」森田は言う。「ケネディ大統領暗殺の時のオズワルドにされるぞ」。訳の分からないまま、青柳は一人逃亡する。
 自分のマンションには既に警察に張り込まれていた。宅配の仕事をしていた頃の記憶を辿って、いつも留守にしていた「稲井」氏のマンションに潜り込んだが居場所がばれ、大学の後輩・小野一夫ことカズのアパートに泊めて貰おうと考える。だが待ち合わせのファミレスに現れたのは私服警官だった。
 カズが痛めつけられている。携帯電話も盗聴されている。駅前のホームレスに偽の電話を頼み、警官たちを欺こうとするが果たせず、青柳は捕まってしまう。護送途中の青柳のセダンに車をぶつけ逃がしてくれたのは、三浦と名乗る巷で話題の連続無差別刺殺犯だった。
 一晩三浦の家に匿われる青柳。その間に、青柳を犯人とする状況証拠が次々と発表された。二ヶ月前、電車で痴漢に間違われたこと。ハローワークで知り合った女・井ノ原小梅にラジコンヘリを進められたこと。現場近くで昼食を食べていたと言う証言。学生時代花火工場でバイトしていたこと。そして繰り返し流される、二年前、空き巣と鉢合わせしたアイドル・凜香を助け、一躍時の人となった時の映像。
 宅配会社の先輩・岩崎に頼んで市外に出ようとするが叶わず、青柳は学生時代のデートの思い出を頼りに、雨宿りに使った廃車を探す。一度は動かなかったその車のバッテリーを交換し、動くようにしてくれたのは6年前に別れた恋人・樋口恵子だった。
 三浦から、知り合いの整形外科医が青柳に似せた整形をした、との情報を受けた青柳。その人物がいると思われる病院に向かう。だがそれは罠で、三浦と待ち伏せしていた警官が相討ちとなる。とにかく逃げよう、と非常階段に出た所で、青柳は両脚骨折で入院中の保土ヶ谷に出会う。
 仙台市内の下水管を把握している、と嘯く保土ヶ谷。「下水管の中を走るか?」と妙な提案をしてくる。病院を出てもう一度稲井氏のマンションに戻り、いったん居場所を確保する青柳。そこにいた警官とともに、TVリポーターに囲まれた父親の映像を見、両親が自分を信じていてくれることを知る。
 病院に運び込まれたカズ、その見舞いに訪れた樋口恵子が偶然保土ヶ谷と出会う。樋口は元同僚・平野晶のつてで、仙台市内の至る所に設置されたセキュリティポッドの整備士・菊池将門を知っていた。
 自首するにしても、射殺などされないよう、周人の中で捕まろう。青柳はTV局に連絡を取り、携帯電話からの自分の肉声を生中継させる話を持ちかける。時間と場所を打ち合わせ、だが、いざその瞬間、音声は繋がらなくなった。…

 いや~、久々、「ラストを先に読む」と言う掟破りをしたくてたまりませんでした。もう先が気になって気になって。青柳の無事を信じたいし、でも最初の方に「事件関係者がほとんど死んでいる」とか書いてあるし、この作者なら妙に爽やかなバッドエンドに仕立てても不思議じゃないし。
 「大きな音が聞こえたらそっちを気にする」と言う森田の言葉、痴漢を許せずタコ殴りにする青柳の父親、轟煙火工場、セキュリティポッド設置の原因となった連続殺人事件、ご飯粒を残したりエレベーターのボタンを親指で押したりする青柳自身の癖、「たいへんよくできました」のマーク。大学時代の思い出から何から、全てのエピソードが繋がる快感。
 何度も「あっ、これかぁ」と思ったし、青柳のお父さんのTVへの台詞は、もう泣きそう、手が震えそうでした。…ただ、ラスト、アパートを貸してた父子のエピソードがよくわかんなかったんですけど; あれ、稲井さんじゃないですよね??;;
 いや、本当、「よくできました」(笑)。面白かった~。…でもまだ『アヒルと鴨のコインロッカー』の方が好きかな。