読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

猫と針 恩田陸著 新潮社 2008年

 恩田陸初めての戯曲。演劇集団キャラメルボックスのために書き下ろした作品。
 公演チラシやパンフレットに寄せた文章、当時の思い出を書いた『猫と針』日記も収録。

 「人は、その場にいない人の話をする」
 舞台上には喪服を着た五人の男女。高校時代の同窓生、オギワラの葬式帰り。心療内科医になっていたオギワラはクリニックで殺された。
 サトウケンジ 営業で歩き回り神経をすり減らして、オギワラに少し話を聞いてもらっていた。
 タナカユキオ 外資企業で訴訟の窓口係をしている。ストレスの溜まる毎日。オギワラと妻との関係を
          疑っていた。
 ヤマダマサヒコ オギワラのカウンセリングにかかっていた。半年前に飛び降り自殺で亡くした妻は、
          ノイローゼ状態になっていた。
 スズキカナコ 旦那のデザイン事務所がうまくいかず、経営が軌道に乗るまでオギワラに借金していた。
 タカハシユウコ 映画監督。友人四人をエキストラに呼び出して、ドキュメンタリー風ファンタジー映画を
          撮ろうとしている。
 久しぶりに会った五人は飲み食いしながら懐かしい人や思い出話に花を咲かせる。子供が出来ず三回結婚を繰り返しているキクチのこと。高三の学園祭前、差し入れのけんちん汁で起きた食中毒事件。その様子を映していたタカハシのフィルムが何者かに盗まれたこと。
 誰かが買出しに行ったり電話をしに行ったり座を外すと、その人物の話題になる。それぞれの背景が徐々に明らかになる中、タカハシが切り出す。
 …「あの時のフィルム、出てきたの」。…

 読み始めて驚きました。ここ数年行ってはいないものの、キャラメルボックスの公演には過去何回か行っています。こりゃえらく作風の違うものに挑戦したなぁ。
 「NHKのアナウンサーって珍しい名前の人多くない?」「けんちん汁、漢字で書ける?」―――もう恩田節炸裂、嬉しくて仕方がない(笑)。
 なのに。第4場最終章、どうも尻切れトンボで終わってしまった感が否めない。恩田さん特有のあの終わり方(苦笑;)とも違う気がしたのですが、後書き代わりの『猫と針』日記を読んで納得しました。…そうか、締め切りが迫って無理矢理決着つけたのね(苦笑;)。打ち上げで「コテコテの『恩田色』に直して別バージョンにする」と宣言したと言う事は、恩田さん本人もあまり納得してないということなんだろうか、と勘繰ってみたくなる(笑)。 
 モノローグより会話の方が覚えやすい、ってのは良く解ります。
 あと、できれば登場人物の名前は漢字表記にしてほしかった。舞台上では視覚・聴覚どちらにも訴えるから大丈夫でしょうが、カタカナの字面だけだと「…え、これ、ここにいる人だっけ、名前だけ登場の人だったっけ??」と多少混乱しました。…いや、私の記憶力が悪いからなんですけどね;
 それにしても、前田綾さんって30代後半にちゃんと見えたのかしら?