読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

冥王星パーティ 平山瑞穂著 新潮社 2007年

 桜川衛はある日、「shoko tsuzuki」と言う女のサイトを見つける。いかがわしいセルフポートレイトを載せる女の顔ははっきりと確認はできなかったものの、衛には高校時代の同級生に似て見えた。しかし、彼女・都築祥子はこんな画像を載せるような女の子ではなかった筈だ。
 母親を早くに亡くし、父と娘だけで暮らしていた彼女とは、中学の時の同級生・瀬賀榛菜を通じて知り合った。あの頃の衛は真面目で真摯で、でもクラくてダサい自意識過剰な少年だった。祥子はそんな衛に好意を持ちながらも、世間ずれしていない衛の思いの重さに耐え切れず、衛から離れて行く。
 大学生になった祥子はクラシックギター部の幽霊部員になる。部室に置いてあったプレミアギターが盗まれた事件から、望月慎吾と知り合う。大学を何年も留年している彼は自分の高価なギターが失くなったにもかかわらずまるで気にせず、最後に部室に鍵を掛けた責任から誤りに来た祥子に、自分は絵を描いて生活して行きたい、祥子をモデルに絵を描きたい、と言い始める。
 成り行きでモデルを務める祥子。以来、望月は祥子につきまとうようになった。望月を避けるように祥子は別の男・吉永と付き合い、吉永がギター事件の犯人だと知る。
 一方、桜川衛は祥子に去られてから、復讐のように女と付き合うようになった。大学で自己改革に努め、社会人になってからは、6年付き合っている「別格」の彼女がありながら何人もの女を落とした。彼女と何となくぎくしゃくし始め、ただの軽い女と思っていた相手から「空っぽだ」と言われ、自分を見つめ直し始めた矢先、「shoko」のサイトを見つける。
 都築祥子に会いたい。原点に戻って、歪んでしまった自分を戻したい。衛は彼女を探し始める。サイトを手掛りに望月と知り合い、祥子が就職した会社を突き止め、そこの元上司から彼女がハンガリーへ行ったことを知る。衛は、祥子がかつてハンガリーの弦楽器・ツィンバロムの音色をとても気に入っていたことを思い出した。また榛菜から、ハンガリーで付き合っていた男と別れて、今また日本に帰って来ていることを教えられる。
 衛は祥子と11年振りに再会する。お互いの離れていた時間を語り合う二人。過去をやっと清算できた気がした衛は、「本命」の彼女に連絡を取る。学生時代よく行ったジャズ喫茶で彼女を待つ。…

 この作家さんもファンタジーノベル大賞出身。受賞作は結構アクが強くてあまり好みの作品ではなかったのでその後追いかけていなかったのですが、「一作ごとに作風を変えている」と言う紹介文に、ちょっと手にとってみました。…確かに作風、全く違いました。
 文章、読み易いっすね~。内容は、後味がいいのか悪いのか、判断が微妙。男運が悪い…のかな、この主人公; 何でこんな所で意地を張るかな;; これじゃ相手は完全に自分を誘ってると思うよ、ってことをしておいていきなり身を翻す。…自業自得じゃん、ってどうも思ってしまう。最終的には自分でもそのことに気付いて前向きになって行くのですが、どうも気付くポイントが違っているような…;; 「いい声に弱い」ってのは声優おたくの私もそうなので、わからないでもないのですが(笑)。
 男の方は、まぁ高校の事件で傷ついたせいかもしれないけど、あれだけ好き勝手しておいて彼女とハッピーエンド、ってのは何かムシが良すぎるような(笑)。私の中に「本命に振られてしまえ!」と囁く悪魔がいます(笑)。
 出てくる登場人物、総じてどうも好感が持てない(苦笑;)。でもそういう愚かな所も含めて、自分を認めて進んで行こう、って感じでしょうか。ラスト前向きであることは確かなんですよね。…困ったもんだ(笑)。