読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ブラック・ジャック・キッド 久保寺健彦著 新潮社 2007年

 第19回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作品。
 ブラック・ジャックになりたかった男の子の、小学4年生から6年生までの出来事を描いたもの。

 「おれ」織田和也は10歳の頃、ブラック・ジャックになりたかった。バイブルである漫画は台詞を暗記するほど読み返し、服装は夏でも黒尽くめ。ロングコートの代わりに母さんに買ってもらった婦人もののコートを羽織り、顔に傷を付けようとして怒られた。メスは投げられないので代わりにドライバー手裏剣を練習、将来は無免許医になることに決めている。
 江淵小ではそれなりに受け入れられていたおれの個性も、引っ越した先の森塚小ではいじめの対象にしかならなかった。担任の若い女教師はなめられていて、おれを笑いものにするガキ大将を抑え込む力はない。初めは30分以上歩いて元の小学校の友達と遊んでいたものの、母さんが去って行ったり父さんの仕事の失敗を知っていたりする友人もいて、段々気まずくなる。やがて、おれは川縁で、一人の女の子と会う。自分の事を「好きなように呼んでいい」と言う彼女を、おれはブラック・ジャックに出てくる如月めぐみにちなんで、「めぐみ」と呼んだ。めぐみはおれを苛めていた相手を不思議な力でやっつけてくれたものの、「そのうちまた、会えるじゃないか!」と言う言葉を残して、おれの前から姿を消す。
 夏休み、涼を求めて入った児童館で、クラスメイトの宮内と泉に会う。それぞれ家庭に事情を持つ三人は集まり、おれは『ブラック・ジャック』以外の少女漫画や小説の面白さを二人に教えてもらう。大人びて博学な泉に惹かれるおれ。学芸会で泉脚本の芝居を演じて、それは決定的になった。
 担任も変わった6年のクリスマス、泉の弟がいなくなる。多分別れた父親の元に行ったのだろう、母親が再婚相手を連れてくる前に家に連れ戻さなければ、と三人は駅の向こう、繁華街を抜けて行く。小学生にとってそれは大冒険でもあった。…

 読み易かったです。通勤電車の中、一日で読めてしまった。
 和也の出会った三人の女の子、三つの幼い恋の話をくっつけた感じ。ただ、長編としてはどうなんでしょう。それぞれがあまり関連がなくて、特に最初の石野さんとのヰタ・セクスアリスなんて要ったかなぁ。ファンタジーである必要もあったのか…。
 頼りない桑野先生とか、もう本当仕事丸投げで腹立たしい。でもいそうなんですよね、こんな教師; こんな先生が担任に当たった日にゃあ、もう運の悪さを嘆くしかない;
 作者の年齢がほぼ同年代。和也たちが読んでる漫画は私もほとんど読んでるし、「ブラック・ジャック走り」も目に浮かんでくる(笑)。その辺りは嬉しいんですけどね~、ちょっと尻切れトンボで、何だか物足りない。決して面白くなかった訳ではないんですが。…う~ん;