読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

一瞬の風になれ 3 ――ドン――  佐藤多佳子著 講談社 2006年

 最終巻。内容ほとんど書いてます、すみません;

 怪我をしてから一ヶ月、12月になって健一は落ち着いた。手術は成功。新二は今まで以上に練習に精を出す。今までの走りをビデオで見て、意識的にフォームを改善、坂道トレーニング、砂浜走。三月末には「レースの組み立て」を考えるほど新二は速くなる。
 4月、速いけれどかなり癖のある新入生・鍵山が入部してくる。一ノ瀬連を神聖視し、二年生にはタメ口をきくような問題児。4継の1走を走るが、バトンの受け渡し方法を変えたこともあってあまり上手くできない。その上、県記録会で鍵山はハムストリングスの肉離れを起こしてしまう。
 以来、部活にも出てこなくなった鍵山を応援に引っ張り出してのインターハイ予選〈地区〉。4継は無事一位通過。二日目、新二は200m予選でコーナー走りのコツを掴む。三日目、100m予選。初めての公式記録10秒台。3000m女子で鳥沢、原今日香、そして谷口も予選を通過する。
 二週間後、県総体。それまでコーナーワークやバトンパスの練習をし、いよいよ春高リレメンのチームワークは高まっていく。
 インターハイ予選〈県大会〉。100m2本目、準決勝で漸く高梨を抜く新二。決勝、突風に悩まされながらも仙波、連に続いて3位、初めて関東大会へ駒を進める。4継は鍵山の代わりに一走に根岸を入れて、バトンパスも上手く行き、鷲谷高校に続いて幸福な2位通過。200m決勝、新二は初めて連に勝って2位。だがそこで体力を使い切り、マイルは7位。関東へは落としてしまう。
 6月、鍵山が復帰。だがバトンパスが上手く行かない。関東も一走を根岸で行くか、悩むメンバーに根岸自身が発破をかける。「全国一になれ、そのためのチームを作れ」。新二たちは鍵山への指導を分かり易くなるよう工夫する。
 インターハイ予選〈南関東大会〉。4継は散々だった。だがそれでも7位で決勝へ。個人100m予選は一回目で北見と走り、準決勝で仙波と走る。そして決勝。他のスタートに惑わされず、新二は自分のレースを走り切り、連に次いで2位となる。
 続けて4継。春高は最高のレースをする。先輩から差し入れされた鉢巻きを締めて、バトンを繋いで。…

 …よかったなぁ。 
 勝つ人だけじゃない、負ける人も描いてる。根岸、本当にいい子だなぁ。関東大会にもっと行けると思ってたのに、って辺り、妙にリアルで切ない。オリンピックとか世界陸上とか、予選通過もままならない様子を思い出してしまいました。インターハイ行くのって大変なんですね~。
 練習風景も本当に丁寧。言葉を選んで、否定形じゃなくて「どうすればいいか」を伝える、って確かにそうだわ、大概の人は誉められて伸びるんだよ(笑)。私事ですが、私が高校の修学旅行で初めてスキーをやった時の指導員が、回転を「体重移動して」と教える人でした。怖くて脚を突っ張るしかできない私にそれはまるで無理だったんですが、他のグループは「右手と右足近付けて」と教わってたんですよね。その方が当然自然に曲がれて、教え方の巧い下手ってあるよなぁ、とつくづく思ったのを思い出しました。ある日不意にコツが掴める瞬間も、確かにあるなぁ。
 走るだけじゃなくて、先輩としても成長していく新二や連。もう眩しいやら嬉しいやら。
 クライマックス迎えて、でもまだインターハイ予選なんですよね。200mも書かれてないし、みんな本選どんな走りしたんだろう。谷口さんにはちゃんと告白したのかな(笑)。
 佐藤さん、中距離選手や長距離選手のことも書いて欲しいなぁ。
 本当、一生懸命読んでしまいました。