読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

【新釈】走れメロス 他四篇  森見登美彦著  祥伝社  2007年

 古典の名作を本歌取りした短編五篇収録。

 『山月記』:
 京都吉田界隈にて、一部関係者のみに勇名を馳せる孤高の学生・斎藤秀太郎。ドエトフスキー的大長編小説の完成を目指してモラトリアム延長の歴史的記録に挑む。そんな斎藤を、成績優秀、明朗快活な同級生・理学部大学院の永田は尊敬し、何かと面倒を見る。
 恋愛沙汰にも見向きもせず、わが道を邁進する斎藤。しかし年月が経つにつれ、自分を信じられなくなる。久しぶりに出会った永田の、変わらず斎藤を信じる姿を見て、斎藤は自分の敗北を悟る。
 そして後輩の夏目は、大文字山で天狗になった斎藤に出会う。…
 …うそ、高校の頃教科書で読んだ原典より内容理解できる気がする…; 

 『藪の中』:
 大学の映画サークルが撮った自主制作映画「屋上」について、関係者たちが語る。
 撮影場所を教えた斎藤、監督の鵜山を尊敬する後輩、主演女優・長谷川の友人、男優・渡邊真一、女優・長谷川菜穂子。そして、恋人の、前の恋人との恋愛映画を撮った監督・鵜山徹。…
 …「飛龍頭」って、「ひろうず」って読むんじゃなかったのか。これは方言なのかな。

 『走れメロス』:
 図書館警察に詭弁論部の部室を取られ、怒りに駆られた芽野史郎。部室を返して欲しければ、学祭の最終日、ステージで『美しく青きドナウ』をバックにブリーフ一丁で踊れ、と言われる。身代わりに親友・芹名を置いて逃亡する芽野。芽野はまるで戻る気はなく、芹名もそんな芽野を正しく理解していた。怒る図書館警察長官。京都中を走り回って芽野を追い掛け回す。…
 …何と阿呆らしい! これ、面白かったなぁ(笑)。何人もの男を手玉に取って猫炒飯をご馳走する須磨さんの彼氏ってどんな人なんでしょう。
「なんだか、たくさん間違っているぞ! 人として!」って台詞は笑ってしまいました(笑)。

 『桜の森の満開の下』:
 「哲学の道」脇のアパートに住む学生。尊敬する先輩・斎藤秀太郎に馬鹿にされながら、小説を書き続けていた。ある春の夜、酔って倒れていたのを助けた女は、そのうち彼の小説にアドバイスを始める。男は彼女のための小説を書き始め、それはどんどん世に認められて行くものの、男は何かを失ってしまう。

 『百物語』:
 友人Fに、百物語に誘われた森見。仕掛け人は、学祭でゲリラ演劇を企画した学生劇団の主宰者・鹿島だとか。百物語の会場で、森見は今まで見も知らなかった斎藤、芽野、芹名、鵜山と知り合う。結局途中で帰った森見。誰も姿を見たことがないと言う鹿島とは会えたと思ったのだが。…

 このうち、原典を読んでたのは『走れメロス』と『山月記』。
 『山月記』は高校の授業でやりました。当時、面白いとはまるで思わなかったんですが、もしかしたら、今読んだら面白いかも、と思わされてしまいました。…でもきっと読まないだろうなぁ(←こらこら;)。
 パンツ番長だの学祭だの、所々他の作品と重なるのが何となく嬉しい(笑)。それにしてもこの人の書く女の人って独特だなぁ。