読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

名もなき毒 宮部みゆき著 幻冬舎 2006年

 『誰か』の続編。
 ネタばれあります、すみません;

 今多コンツェルンの社内報編集部で雇ったバイト・原田いずみはトラブルメーカーだった。ミスを指摘して殊勝だったのは初めだけ、後は言い訳する、開き直る、逆切れする、被害妄想をわめき散らして暴れる。こちらの言うことなどまるで聞かない。仕方なく馘にした所、弁護士を立てて訴えると言い出した。彼女の履歴書の内容を確認しようと訪れた前の職場で、杉村三郎は私立探偵・北見一郎を紹介される。彼の家で杉村と顔を会わせたのは高校生の古屋美知香。彼女は二ヶ月前、祖父を殺されていた。青酸カリの入れられたパック入りウーロン茶を飲んで死んだ祖父・古屋明俊。四件の連続無差別毒殺事件の犯人は未だ捕まらず、それどころか警察は美知香の母、明俊の娘暁子を疑っていると言う。
 成り行きで事件を調べる杉村。明俊がウーロン茶を買ったコンビニの店長・萩原に会い、店員・外立に会う。若手ジャーナリスト・秋山省吾を訪ね、彼の従妹・五味淵まゆみと知り合う。
 原田いずみの嫌がらせも止まない。話し合いは何度もすっぽかし、杉村と美知香の盗撮もする。やがて、編集部のコーヒーに大量の睡眠薬を入れる傷害事件を起こし、指名手配を受けるようになってしまう。
 そうこうするうち、四件の事件のうちの二件の犯人が自首する。もう一件も自殺であることが判明、いよいよ疑われる暁子。美知香は憤り、自分の想いを綴ったホームページを立ち上げ、杉村に、祖父の恋人だった女性・奈良和子と会いたいと訴える。だがその寸前、和子は飛び降り自殺をしてしまった。彼女のバッグには、青酸カリが入っていた。
 犯人は本当に彼女だったのか、別の可能性に思い当たってしまう杉村。その頃原田いずみは杉村の幸せを妬み、彼の家に押し入って、娘の桃子を人質に立て篭もっていた。…

 …粗筋書くの難しかったなぁ。
 何なんだろう、許されないことをした外立くんよりも、原田いずみの方が始末に負えないように思える。ここまで極端でなくても、いそうなんだよなぁ、こんな人; で、私の中にも、ここまで極端ではないけど、あるんだよな、こんなところ(苦笑;)。あんないい両親に恵まれて、何であんな風になってしまうんだか、やりきれない。シックハウスや土壌汚染や、原因の判る毒より厄介。
 でも、前作で「口に毒がある」と表現されていた杉村さんのお母さんのいい面が紹介されましたね。そうだよね、杉村さんを育てた人だもの、心根のしっかりした人でない筈が無い。ああいう真っ当な人がいるとそれだけでほっとして涙ぐんでしまいそうでした。お兄さんやお姉さんも、決して杉村さんのことを気遣ってない訳ではない。
 反対に菜穂子さんの方が、裕福さ故の傲慢さがちらほら見えてきました。価値観の違いと言ってしまえばそれまで、本人に悪気は決してないんだけど、今までの菜穂子さんの生活環境では決して自分からは気付けないところ。こんな人にも、見ようによっては毒がある。杉村さんは「自分の卑しさ」と表現するんだろうけど。定年間際の谷垣さんも園田編集長に対して険のある言い方をしたりもして、毒が無い訳ではない。
 ジャーナリストの秋山さんが「いい男」でしたね。宮部さんの作品で「いい人」ではなく「いい男」が出てくるのは珍しい気がする。秋山さんの「我々は彼の最初の告白を裏付けてやらなければなりません」には目が醒める思いでした。加西くん頑張れ、ゴンちゃんを勝ち取るため越えるには相当高いハードルだぞ(笑)。
 杉村さんが「探偵になる」道筋はつけられました。菜穂子さんや桃子ちゃんと、幸せに暮らしていけたらいいんだけど。暗雲立ちそうな雰囲気で怖いです。