読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

バンビ―森の生活の物語―  ザルテン著/高橋健二訳  岩波少年文庫  1952年

 ドイツでの出版は1923年。

 前々から、ディズニー映画の原作は読んでおいた方がいいだろうな、と思っていました。何しろ『人魚姫』をハッピーエンドにするお国柄、映画だけを鵜呑みにはしちゃいけないだろうな、と。と言っても私『バンビ』の映画、小さい頃見たきりでほとんど覚えてはいないのですが(苦笑;)。この間読んだ荻原規子さんの『ファンタジーのDNA』で紹介されていたことも手伝って、今回手に取りました。
 まず、ドイツの作品だった、ってことにびっくり。この翻訳家さんのお名前はどこかで見たことがあるぞ、私の愛読書『エーミールと探偵たち』を翻訳した人じゃないか!ってんでいきなり好感度アップ(笑)。単純なもんです(笑)。
 作品としては本当に地味。ディズニー、どうしてこの作品に目を付けたのやら。森で生まれた鹿の子・バンビの生活が淡々と綴られます。鹿にとって最大の脅威は「あれ」――人間。猟銃で仲間を撃ち殺し、森の木々を倒して行く全能の存在。バンビの幼馴染み・ゴーボは人間に捕まり、そこで育つうち人間への警戒を無くす。何故かもう一度森へ帰って来たゴーボは、恐れも無く人間の前に出て、撃たれて死んでしまう。やりきれない話のはずなのに、印象としては本当に淡々と事実を述べている感じ。母を殺されたバンビは老いた雄ジカ「年寄り」に様々なことを教えられます。最終的に「人間は全能ではない」と言うことを悟る。「別なひとがわたしたちみんなの上にいるのです……わたしたちの上に、あれの上に」と言う台詞には、何だか宗教を感じました。
 最初は従妹のファリーネを愛し追いかけていたバンビも、年寄りの教えを守り、ひとりで過ごすようになります。命を守り、生存ということを理解し、知恵をきわめたいと思うなら、ひとりでいなければならない。…そうか、物事の探求には恋愛沙汰は排除しなけりゃならないんだな。何か妙にドイツ的かも、と偏見に満ちた感想を持ちました(笑)。