読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

13階段 高野和明著 講談社 2001年

 第47回江戸川乱歩賞受賞作。

 保護司をしていた老夫婦が殺された。手斧での惨殺。現場近くでバイク事故を起こしていた青年・樹原亮が犯人とされた。樹原は被害者が担当していた前科者、保護観察中の犯罪ということもあり死刑判決が下りる。樹原は事故のショックで犯行時刻前後数時間の記憶を失っており、本人に犯罪を犯した実感はない。その上、記憶がないので再審の申し立ても改悛を示すこともできず、死刑執行の時は近づいていた。
 刑務官の南郷は、樹原が冤罪ではないかと言う弁護士・杉浦に頼まれて、改めて事件を調べ始める。助手に選んだのは二年の服役を終えたばかりの青年・三上純一。純一は絡んできた酔っ払いをはずみで殺した過去を持っていた。
 出所した純一を待っていたのは、被害者の親族に払う慰謝料のため、困窮した生活を送っている純一の両親、犯罪を犯した兄のため高校を中退せざるを得なかった弟、元の仲に戻れない恋人の友里。だが純一が殺した男・佐村恭介の父親・佐村光男は、詫びに訪れた純一を、非常な覚悟で受け入れる。そんな純一を更正すると信じる南郷。南郷は刑務官として自らの手で死刑囚を葬ったこともあり、遺族の代わりに犯人に罰を与える応報刑と、更正させて社会復帰の機会を与える目的刑の間で揺れていた。
 事件当時見つからなかった凶器と盗まれた通帳や印鑑を探す二人。そのうち、被害者が面倒を見ていた別の前科者の犯行ではないか、という線が浮かんでくる。内閣解散が近付き、樹原の死刑執行書に大臣のサインが書かれる。タイムリミットが迫る中、ようやく見つけた凶器には、純一の指紋があった。
 保護司夫妻を殺したのは誰なのか、杉浦弁護士に樹原の無実の証明を依頼したのは、樹原の記憶に唯一ある階段とは。純一を信じる南郷は、本当の犯人に思い当たる。…

 米原万里さんが著作で紹介していた作品。
 読み始めてすぐ、ちょっと後悔しました。…内容が重い。こんな夏バテでふらふらしてる時に読むのは少々辛い; でも冤罪を晴らそうとする作品なんだから、きっとラストは後味いいはず!と少しずつ読みました。
 …すごい内容。死刑を実際に執行する刑務官の苦悩、死刑囚の精神状態。それでも納まらない遺族の思い、真実改悛し更正しようとしても立ちはだかる世間の壁。
 死刑に賛成するのも反対するのも、世間一般の人間は所詮ひとごと。実際手を下すのは刑務官、その人が背負うもののことは考えたことなかった。アメリカでは確か遺族が電気椅子のスイッチを押すんですよね。日本でもそれはしてもいいんじゃないかな、と少々乱暴に思ってしまいました。
 米原さんも言っていたとおり、証拠物品を今まで残してたのが気になりましたが、二転三転するラスト、本当後半は一気でした。…でも時間はやっぱりかかったなぁ(笑)。体力ない時に読むのはきつかったですが、でも考えさせられました。