『街の灯』続編。昭和初期、令嬢・花村英子と女性運転手・別宮みつ子(ベッキーさん)の周りに起きる謎を描いた短編集。
『幻の橋』
女学校の友人、内堀銀行のご令嬢・内堀百合江さんが恋に落ちた。お相手はウチボリ・ランプの御曹司・東一郎氏。ところがお互いの祖父は犬猿の仲。明治の頃、百合江の祖父の死亡広告を東一郎の祖父が出す、と言う嫌がらせをしたためらしい。だが、東一郎の祖父はそんなことをした覚えはない、そちらこそこちらを嵌めたのだ、と言い張って埒が明かない。帝国図書館で当時の新聞を調べてみると、その記事の名義人として東一郎の祖父のほかに「冨田ツル」の名が並んでいた。百合江は冨田ツルと言う女性にはまるで覚えがない、と言う。
孫から泣きつかれた祖父はどちらも仲直りを決意。百合江の家で開かれる、話題の講師・段倉荒雄を呼んでの講演会に東一郎は招待され、土産に浮世絵を一枚持参する。だが、大広間に飾られた筈の絵は無くなっていた。…
…大正天皇のお母さんって側室だったのか。知らなかった。
女学校の友人、内堀銀行のご令嬢・内堀百合江さんが恋に落ちた。お相手はウチボリ・ランプの御曹司・東一郎氏。ところがお互いの祖父は犬猿の仲。明治の頃、百合江の祖父の死亡広告を東一郎の祖父が出す、と言う嫌がらせをしたためらしい。だが、東一郎の祖父はそんなことをした覚えはない、そちらこそこちらを嵌めたのだ、と言い張って埒が明かない。帝国図書館で当時の新聞を調べてみると、その記事の名義人として東一郎の祖父のほかに「冨田ツル」の名が並んでいた。百合江は冨田ツルと言う女性にはまるで覚えがない、と言う。
孫から泣きつかれた祖父はどちらも仲直りを決意。百合江の家で開かれる、話題の講師・段倉荒雄を呼んでの講演会に東一郎は招待され、土産に浮世絵を一枚持参する。だが、大広間に飾られた筈の絵は無くなっていた。…
…大正天皇のお母さんって側室だったのか。知らなかった。
『想夫恋』
校庭で熱心に『あしながおぢさん』を読んでいた同級生・清浦綾乃さんに親しみを覚え、思わず声をかけてしまった英子。家へ呼んでウェブスターの他の著作を貸したり、映画の話をしたり。『間諜X27』や江戸川乱歩の暗号の話をした後、綾乃さんは謎の手紙を残して姿を消す。英子はベッキーさんの助けを借りて、暗号を読み解く。…
…私は『あしながおじさん』より続編の方が好きだったなぁ。
校庭で熱心に『あしながおぢさん』を読んでいた同級生・清浦綾乃さんに親しみを覚え、思わず声をかけてしまった英子。家へ呼んでウェブスターの他の著作を貸したり、映画の話をしたり。『間諜X27』や江戸川乱歩の暗号の話をした後、綾乃さんは謎の手紙を残して姿を消す。英子はベッキーさんの助けを借りて、暗号を読み解く。…
…私は『あしながおじさん』より続編の方が好きだったなぁ。
『玻璃の天』
ひょんなことから英子は末黒野貴明の新築お披露目に招待された。彼の家を設計したのは若き建築家・乾原剛造。ステンドグラスに魅入られた乾原は、末黒野の家も数々のステンドグラスで飾り、大広間の吹き抜けも雁の飛ぶステンドグラスを天井にした。広間で『カリガリ博士』が上演されているその時、屋上からステンドグラスを突き破って段倉荒雄が落ちてくる。屋上への階段へは降り始めた雪の中、登りの足跡が二つだけ。自由思想、民主思想を排撃する段倉と乾原、ベッキーさんの間には隠れた因縁があった。…
ひょんなことから英子は末黒野貴明の新築お披露目に招待された。彼の家を設計したのは若き建築家・乾原剛造。ステンドグラスに魅入られた乾原は、末黒野の家も数々のステンドグラスで飾り、大広間の吹き抜けも雁の飛ぶステンドグラスを天井にした。広間で『カリガリ博士』が上演されているその時、屋上からステンドグラスを突き破って段倉荒雄が落ちてくる。屋上への階段へは降り始めた雪の中、登りの足跡が二つだけ。自由思想、民主思想を排撃する段倉と乾原、ベッキーさんの間には隠れた因縁があった。…
右寄りになって来ていると言われている昨今、北村さんがこの作品を出した、ってことを深読みしていいのかな。北村さん、元々高校教師だったそうだしなぁ。
「見事に布陣出来る者は戦うまでもなく、見事に軍を動かす者は布陣するところまで事態を運ばずして、勝ちを収めるのでしょう。――出来得る限り、戦という手立てによらずに、様々なことが解決出来ればと――希望いたします」
…本当に。
きな臭くなっていくこの時代、英子さんやベッキーさんはどうなって行くんだろう。北村さん、そこまで書くのかな。
「見事に布陣出来る者は戦うまでもなく、見事に軍を動かす者は布陣するところまで事態を運ばずして、勝ちを収めるのでしょう。――出来得る限り、戦という手立てによらずに、様々なことが解決出来ればと――希望いたします」
…本当に。
きな臭くなっていくこの時代、英子さんやベッキーさんはどうなって行くんだろう。北村さん、そこまで書くのかな。