読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

スロウハイツの神様 ㊤㊦  辻村深月著  講談社ノベルス  2007年

 ネタばれ、ばりばりしてます。今年発売の作品で、本当、すみません;

 新進気鋭、今上り調子の若手脚本家・赤羽環。祖父から遺された小さな旅館を改築して「スロウハイツ」と名付け、自分の気に入った仲間を集めて共同生活を始めた。
 101号室には狩野壮太。身内に闇を抱えながらもそれを表に出さず、毒の無い児童漫画家目指して投稿を繰り返す。
 102号室には長野正義。映画制作会社で働く、映画監督の卵。感情を入れない演出が不評で、プレゼンになかなか通らない。
 103号室には森永すみれ。画家の卵。腕はあるのだが気性が弱く営業下手で、しかも恋に溺れやすいタイプ。
 201号室は円屋伸一。高校からの環の親友。環に内緒で漫画家を目指している。
 202号室は千代田公輝。青春のある一時期にだけ響く作品を書く小説家。「チヨダ・コーキはいつか抜ける」と評されながらも、十代には絶大な支持を得ている。
 203号室は黒田智志。チヨダ作品をプロデュース、メディアミックスも含めた「チヨダブランド」を売りまくる、漫画雑誌「週刊少年ブラン」の敏腕編集長。
 うち、円屋は同い年の環に劣等感を抱き、部屋を出て行く。
 代わりに201号室に入ったのは加々美莉々亜。新潟から出てきた小説家の卵だと名乗る彼女は、黒田の推薦を受けて入居した。チヨダ・コーキの大ファンだと、臆面もなく公輝につきまとう。やがて正義は、莉々亜が十年前公輝の危機を救った「コーキの天使ちゃん」ではないかと推測、彼女もそれを肯定する。
 「コーキの天使ちゃん」。…十年前、大量殺人犯が「チヨダ・コーキの作品を模倣して罪を犯した」と発言。マスコミから糾弾され、業界から干された公輝に再び筆を取らせた原動力。事件後、地元の新聞社に128通もの公輝擁護の投書をし続けた一人の少女に付けられた愛称。コーキ復活に当たり、誰より公輝を力づけた彼女に名乗り出てもらおうと「ブラン」で公募をしたが、当時この救い主は現れなかった筈だった。
 「週刊少年ブラン」の亜流雑誌「週刊少年フラット」で、チヨダ・コーキの悪質な模倣をして話題になる作家・鼓動チカラ。母親が二度も詐欺罪で捕まり、そのために父親も祖母も友人も全て失った環たち姉妹が心の拠り所にしたのはチヨダ・コーキの作品だった。彼の作品を侮辱するとは許せない。環は鼓動チカラをもチヨダブランドの宣伝に利用しようとする黒田に怒りを向ける。
 「ブラン」でコーキと二枚看板を張る人気漫画『ダークウェル』の覆面原作者・幹永舞は誰か、鼓動チカラの正体は。だが、当の本人・千代田公輝は全く気にする様子が無い。…

 …ええとですね。…長かったです。特に上巻が。
 読み始めがですね、何か目的地が見えなくて。エピソードを淡々と連ねて行くだけ、多分伏線になってるんだろうとは予想がつくんですが、でも読むの辛いんですよ。落ちのない話を延々聞いてる感じで。
 で、クリエイターの卵たちの会話がですね、「…若いね~」って感じで私には少々イタイ。あの分析癖って、勿論私にもあって、それは反省しきりなんですが、何しろ劇中内での自分の作ったキャラクターたちがまた自分たちの作品を評価しあう、と言うのも何か自家中毒的に見えて;
 作者本人が「おとぎばなし」と言うからには、細かい所でリアリティ出さなきゃいけない筈だと思うんですが、どうも違和感を感じてしまいまして; 週刊漫画誌で小説連載? 莉々亜、他人の部屋に入り浸りながら、いつ原稿書く暇あったの? 週刊誌の漫画原作を(あれ、多分狩谷壮太が幹永舞なんですよね??)誰にもばれずに書ける? それとも外に仕事場があったのかな、しかも自分の漫画原稿仕上げながらでしょ??
 実は出だし、壮太が喫茶店で漫画の下描きを雑談しながらした段階で「え??」だったんです。ペン入れ、トーン貼りならできるかもしれない。でも、下描き、雑談しながらできるかなぁ。これはMさんやSさんにも聞いてみたい所だわ(笑)。
 ラストはじわりときました。公輝の足長おじさんっぷり、図書館への寄贈本だのTVだのケーキだの、前半のエピソードがちゃんと繋がって、ここではしっかり感動できたんだけど。
 …う~ん、どうもひねくれていかんな;