読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

凍りのくじら 辻村深月著 講談社ノベルス 2005年

 その頃の芦沢理帆子は高校生で、ろくでもない男と付き合い、つまらない目に遭ったばかりだった。
 読書家で精神年齢が高く、周囲に「あわせてあげて」つきあっている理帆子。周囲の人を、敬愛する藤子・F・不二雄のSF(少し・不思議)に倣って「少し・ナントカ」と分類する。元彼・若尾大紀は大学を出た後司法試験を目指して浪人中。その「少し・腐敗」具合に惹かれて、理帆子は彼の肥大した自我を甘やかした。少し前に若尾から別れを切り出され、彼の救いようの無さに気付き始めていた理帆子は、あっさりそれを受け入れる。だが、却って若尾は理帆子に執着し始めていた。
 理帆子に一学年上の別所あきらが近づいて来る。彼女を写真のモデルにしたいとか。理帆子の父はその写真が世に認められ始めた矢先に癌に侵され、五年前行方不明になってしまった写真家・芦沢光。自分を口説こうと思っているのかと思いきや、彼には思い人がいると言う。確かに彼は理帆子の写真を撮るだけ。だが一緒にいる時間は心地よく、理帆子は彼に色々な話をする。ドラえもんのこと、若尾のこと、父への思い、母との確執。癌に侵され長く入院している母・汐子は、父のことをどう思っていたのか、理帆子には今一つピンと来ないこと。
 別所に導かれ会ったのは、両親の共通の友人・指揮者松永の私生児・郁也だった。言葉の話せない郁也と家政婦の多恵に、癒される理帆子。死ぬ間際まで母が監修し続けた父の写真集を見て、母の思いを垣間見る。自分の傲慢さ、周囲からの愛情にようやく気付き始めたころ、壊れた若尾が郁也を狙う。
 さらわれた郁也を探して山中に入る理帆子。麓への道を見失った彼女の前に別所が現れ、ライトを照らす。…

 …最初の方でとにかく時間取られました; 理帆子の性格が「何じゃこりゃあ???」って、全く好感持てなかったもので(笑)。これは醒めてるんじゃないよ、上から見下ろしてるんだよ、こいつ何様だよ、ってまぁ進まない進まない(笑)。でも半分辺りから早かったですね~、若尾が壊れて行ってお母さんが亡くなって、写真集の原稿を見て、ってもう泣けて泣けて;; 例によって電車の中だったのでできるだけ堪えましたが、家で読んでたら絶対ぼろぼろ行ってたなぁ。プロローグ、エピローグはどちらも少しもたついた気がして勿体無かったけど。
 ただねぇ。氷の中に閉じ込められたくじらって、その現地の人や動物たちからしたら「ごちそう」なんだそうですよ。せっかくの天の恵みなのに世界中が騒ぐから無駄にするしかなかった例もあるそうですし。
 登場人物としては多恵さんの描写が気になりました。60代前半で姿勢がよくて髪染めてたら、今時「おばあさん」に見えないよ; それとも作者の年齢からしたらおばあさんなのかなぁ。いかにも家政婦然とした喋り方も「…これはどうだろう??」(笑)。
 引っかかる所もあったけど、最初の理帆子の性格が性格だっただけに、読後感はとにかくよかったです。…後半は家で読めばよかった。
 私は「どこでもドア」が欲しいかなぁ(笑)。