読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

暗黒童話 乙一著 集英社 2001年

 乙さん、初めての長編作品。

 私・菜深は左目を怪我で無くし、一緒に記憶も失った。以前の私は明るい優等生だったらしいが、今の自分は勉強も運動もピアノも、何も出来ない。やがて移植手術を受けた左目からは、以前の持ち主・冬月和弥の見ていた映像が断片的に蘇る。記憶の無い私にはその景色の方が懐かしい。活発だった「私」を求める両親とも折り合いが悪くなり、私は家出する。行く先は和弥が死んだ場所。和弥は、何者かによって青い煉瓦造りの屋敷に手足を切断された少女が連れ込まれているのを目撃し、その人物から逃げる途中で車に轢かれて死んだらしい。その少女を助け出そうと、私は和弥の姉・砂織を訪ねる。見覚えのある喫茶店、公園、懐かしい人たち。実の親といるよりも安らぎを感じる私。私は喫茶店の常連・潮崎を怪しいと思い、山中にある彼の家を和弥の友人・住田と共に訪ねる。潮崎の家は青い煉瓦造りの古い屋敷だった。…

 乙さんの作品も、どれを読んでどれを読んでないか分からなくなってます。…同じ作品が後からハードカバーで再編集されてたりするからなぁ。これは読んでませんでしたね。
 期待に違わぬホラーっぷり(笑)。乙さんの作品にはあまり「意外な真相」とか期待していなかったのですが、途中で「…これは何かあるかも???」と細部に気を配り始めました。でもやっぱり騙されてしまった(笑)。
 手足を切られた少女・相沢瞳や同体になってしまった久本真一・持永幸恵、引っくり返されてしまった金田正…。この人の「異形」は本当、視覚にくるわ;
 本人あとがきで照れて茶化してましたが、このラストは切ない。記憶を取り戻し始めた自分が、わずかな間だけ存在した不器用な自分を認め、彼女に向かって誓いを立てる。前向きではあるんだけど寂しい。さすが、「せつなさの達人」(笑)。
 しかし、乙さん、「見えない」ことに拘った作品多いなぁ。