読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

しゃべれどもしゃべれども 佐藤多佳子著 新潮社 1997年

 今昔亭三つ葉、本名外山達也。今年二ツ目五年目の26歳、噺家
 吃音癖のある内気な従弟・綾丸良に頼まれて、落語を教える羽目になってしまった。あれよあれよ、訳の判らないうちに生徒の数が増えてくる。
 黒猫のような美人だけどおそろしく無愛想な十河五月、関西弁をクラスメイトに馬鹿にされていじめにあっている小学五年生・村林優(でも本人は「一対七、八くらいの喧嘩や」と主張)、昨年球界を引退して解説者になったもののうまく喋れず往生している代打専門のピンチバッター・湯河原太一。
 祖父さんっ子だったこともあって自信家の三つ葉には、この三人のコンプレックスがよく解らない。だが、落語に行き詰まり、祖母さんにお茶を習いにきているお嬢さん・郁子さんに振られて、ようやく三人の側に寄り添って考え始める。
 今昔亭小三文師匠からは俺の二番煎じになるなと言われ、師匠の弟弟子にあたる草原亭白馬からは昔に逆戻りするなと言われ、それでも正統な古典落語がやりたい。
 悩んだ挙句、三人に振り回された挙句の一門会で、三つ葉は『茶の湯』を演じきる。
 お次は、と調子に乗って、村林と十河の落語会を企画。何と村林のクラスメイトまで招待してしまった。勿論、対立している相手・宮田も入れて。発表会当日、六甲おろしに背中を押され、村林は高座に登る。『まんじゅうこわい、東西対決』、30分もの上方落語を宮田の前で演じるために。…

 私は多分、この年代の中では、落語好きな方だと思います。夜中のNHK番組とか時々見てるし。これは桂枝雀さんの黄金期に触れたことが大きいです。我が家では未だに「すびばせんね゛ぇ」と言うあの言葉が飛び交います。今回の、村林くんが演じる『まんじゅうこわい』、「あなた、アリの恐さを知らないですね」の台詞に思わず頬が緩みました。「あなた」の「な」が「な゛」なんですよね(笑)。
 でも寄席に行ったことないから落語ファンではないな。江戸落語においてはほとんど知らないし、今回の『まんじゅうこわい』も、上方版で30分以上ある、って「…え、そんなにあったっけ;」とか思ってしまいました(←こらこら)。「ぅれぇんこんのてんぷるぁ(=れんこんのてんぷら…ああ、巻き舌を上手く表現できない;)」って好物を言うのってこの演目じゃなかったっけ??(笑)
 米朝さんは「まず自分の真似から入れ」と言うそうです。ざこばさんが「それがワシには無理なんや」と嘆いてらした覚えが(笑)。若いうちになるべく噺を覚えろ、とも。色々やり方があるんでしょうね。
 子供の関西弁を標準語にしようとするお母さんに、関西人としてちょっとむっかり。村林くんが野球では宮田くんに勝てなかった所がすごい。でもきっと宮田くん、長じて女の子にもてないよ。付き合い始めることはできるだろうけど、きっと女の子に振られ続けるタイプになると思うな(笑)。
 この前読んだ『黄色い目の魚』がちょっと胸に迫りすぎて、今回はさらりと流れてしまった感じです。面白かったのは面白かったんですけどね。読む順番間違えたなぁ。
 映画の主演は国分太一くんでしたっけ、それはイメージ違う気がする(笑)。