読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

第九の日 瀬名秀明著 光文社 2006年

 『デカルトの密室』と同じ舞台の連作作品集。

 『メンツェルのチェスプレイヤー』:『デカルトの密室』より前の作品。
 レナとケンイチは児島教授の家に招待された。そこで教授はレナに、自分が作ったヒューマノイドとチェスの対戦をするよう申し出る。その夜、屋敷内に鳴り響くビープ音と共に教授の映像が映し出される。「この映像を見ていると言う事は、私はロボットに殺されたと言う事だ。自由意志を持つロボットに」…
 更にレナにヒューマノイドとのチェスを強要、レナが負ける度に、現在行われている学会に参加している人物を誰か一人、ロボットが殺すと話す。レナが試合している間にケンイチは屋敷を探索、レナは対戦しながら真相に迫って行く。教授は本当に殺されたのか、犯人は本当にロボットなのか。その目的は。…
 …これは『デカルトの密室』より先に読むべきですね、大きなネタばれがあるから。途中で察しがつくものと、大オチになってるものと。まぁ、内容的には大丈夫だけど。

 『モノー博士の島』:『デカルトの密室』より後の作品。
 レナとケンイチはモノー博士の島に招待される。軍需産業で儲け、医療ロボットを作り、義肢を売るモノー博士を、レナは好きにはなれない。義肢により健常人より運動能力を発展させた人々を肯定しているモノー博士は、殺人予告を受けていた。自らの体も改造して銃弾も跳ね返す胸筋を手に入れていたのに、果たしてその時間、モノー博士は殺される。彼の傍についていたボディガード兼医師・モンゴメリも、自らの義手で頚動脈を切って自殺。島のアニマロイドたちも異常な行動を取り始める。…

 『第九の日』
 ケンイチは公共機関を使って一人旅をしていた。リタイアした老人たちが生活している村に宿を借りるが、何故か人間が見当たらない。共に暮らし、その世話をしているヒューマノイドと、ペットの動物たちがいるばかり。その頃祐輔は、狂信的なテロリストの標的となっていた。『ナルニア国物語』の物語と共に、ロボットが宗教を語り始める。ケンイチはこの村を出ることができるのか、祐輔は何故狙われているのか。それを理解した時、祐輔の心が殺される。…
 …このラストは本当にびっくりしました。祐輔の『ナルニア国物語』の解説を読んで、私がこの物語の内容を忘れてた理由が少し判った気がします。でもこれは、『デカルトの密室』読んでないと。…順番どう読めばいいんだ;

 『決闘』
 祐輔は入院中。すっかり心が折れてしまった祐輔を、レナとケンイチが元気づける。薬剤師の高井は、ケンイチに朗読を教え、病室でチェーホフの『三人姉妹』を演じる。それは、レナの乗った飛行機がテロにあって炎上したその日だった。…
 …おいおい、どこまで不幸が追いかけるんだ; 

 作中、今までケンイチ君の姿の描写がなかった理由が語られます。成る程、読者の時代を限定させないためだったのね~。
 『デカルトの密室』よりは面白く読めたけど、これを理由にテロリストの標的にされたら、無宗教の人には納得行かない。だから余計やりきれないんですが。
 
 偶然ですが、大晦日にこの題名。丁度よかったですね。