読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

シャングリ・ラ 池上永一著 角川書店 2005年

 近未来の東京を舞台にした長編伝奇(?)小説。
 ネタばれ少しあります、すみません;

 温暖化が進んだ地球。国連は各国の出すCO2濃度による「炭素税」制を導入。日本はそれに対し東京を森林化すること、空中の二酸化炭素から炭素素材グラファイトを作り出す「空中炭素固定技術」の開発で一躍先進国に躍り出た。遺伝子操作された植物は亜熱帯の気候も相まって凶暴に繁殖し、東京は森林化と言うよりジャングル化。都民は全て空中巨大都市「アトラス」に移住できる筈だったが、実際に許可が下りたのは富裕層のみだった。地上に残った人々はゲリラ化し政府と交戦、ジャングルに囲まれた「ドゥオモ」と呼ばれる巨大違法建築物に密集して住んでいる。
 北条國子は18歳。ドゥオモの次期総統として現総統・凪子から帝王学・経済学等を仕込まれ、ニューハーフのモモコから愛情と格闘術・下ネタをたっぷり注がれ、ゲリラ兵の武彦を始めとするドゥオモの住民から愛されて育った。植物がますます侵食する地上を諦め、元々の約束通りアトラスへの移住を決意、アトラスへの攻撃を開始する。
 石田香凛は幼心に、ただ忙しい両親と食事を取りたいと金儲けに走る。天才的な頭脳を駆使して経済炭素予測システム「メデューサ」を起動。シンガポールのチャン、フランクフルトのクラリス、ニューヨークのタルシャンと共に世界炭素経済市場をかき回す。
 美邦はアトラス六層に住む八歳の少女。紫外線に弱く、昼間表に出られない。医師小夜子を始めとする女官達にかしずかれて暮らしている。霊力に恵まれ、彼女に嘘を吐いた者は皆、その夜惨たらしい姿で死んでしまう。偶然その瞬間を見てしまった元ドゥオモの住人・ニューハーフのミーコはその素直な性質を見込まれてそのまま美邦に仕えることになる。
 國子達のアトラスへの潜入は失敗するかに見えたが、グラファイトの創始社アトラス公社の密かな後押しにより成功する。政府軍少佐・草薙国彦の協力も得て有毒ガスまで吐き出すようになったジャングルを焼き払った國子。第二次関東大震災以後、また焦土と化した東京に見えたものは皇居を中心とした巨大なペンタグラムだった。
 自由意志を持ち、最大の二酸化炭素発生源を人間と特定、暴走するメデューサ。小夜子の学友で小夜子を貶めることを生きがいとする涼子。巨大建築物アトラスを支えるために人柱にされる少女たち、アトラス公社最高経営責任者・水蛭子の予言。アトラスの裏に潜んでいた計画は何なのか、アトラス公社は何故國子を助けたのか。様々な人物の思惑が入り混じり、物語は終局へ向かう。…

 …これ、映像で見たい…! 月刊ニュータイプで連載(それにしてはこの装丁は違う読者層狙ってるよな)、ってことはカドカワもそれ視野に入れてるんじゃないの、と思いつつ読んでたんですが、後半考えが変わりました。…こりゃちょっとデリケートかも。でもね、國子がセーラー服翻して鉄兜かぶってドゥオモの前にどぉぉぉん!と仁王立ちする姿とか目に浮かぶ。やって欲しいなぁ。
 何しろモモコさんが魅力的で、もう名言(?)目白押し。「女のことはオカマに相談するのが一番よ」始め、「ニューハーフはね」から始まる数々の台詞の素敵なこと!(笑) 後半活躍する場が減ってしまったのが個人的に少し残念。
 登場人物が『トムとジェリー』並みにタフ。バイクにひかれてぺらぺらになろうが爆風に吹き飛ばされようが霊に憑かれようがとにかく生きてる。雑魚キャラは簡単に死にまくりますが(苦笑;)。女性は(擬似女性も含めて・笑)パワフルでエネルギッシュで感情的、でもあんまり頭良く見えない(笑)。男性キャラはそれに比べるとおとなしいなぁ。理知的ではあるんだけど、結局欲望には情けなく負けたりしてるし。
 池上さんの作品は一応全部読んでる筈なんですが、どれを読んでも「やっぱりデビュー作『パガージマヌパナス』の方が面白かった」と思ってしまってました。今回、どうしても息切れがしたりリズム乱れたり、デビュー作の一気に駆け抜ける感じは残念ながら減ったけど、でもこれだけスケール大きくして、だもんね。しかも沖縄以外の舞台で(笑)。
 「…これは呑気に構えてたらいつ読めるかわからん」と五月に図書館に予約入れて、ようやく回ってきました。実際本を見て解りました。…分厚い。こりゃ時間かかるわ; 
 …それにしても。モモコさんの言う「銀」って何?? 後半のあれが答えでは、ちっとも下品でも卑猥でもないんですけどーー;