読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎著 東京創元社 2003年

 吉川英治文学新人賞受賞作品。
 多分ネタばれになります、すみません;

 大学に入学するためアパートの103号室に引っ越してきた僕・椎名が最初に出会ったのはしっぽの先が曲がった黒猫、次は黒尽くめの服装をした隣人だった。河崎と名乗る隣人は、恋人がいなくなって気落ちしている101号室のアジア系留学生を元気づけるため、広辞苑をプレゼントしたいと言う。しかも、町の本屋で強盗して来た広辞苑を。モデルガンを渡され、いつの間にやらそれを手伝う事になってしまった僕。この不思議な隣人は何を考えているんだろう。
 並行して、二年前の出来事も語られる。ブータンからの留学生、ドルジと恋人の琴美。その頃頻発していたペット虐待犯の三人と偶然はちあわせしてしまったことから、琴美は三人組につけ狙われる。留守録への脅迫、アパート前での待ち伏せ。心配するドルジと琴美の元カレ・河崎の間に奇妙な友情が芽生え、それが面白くなくて琴美は余計に意地を張ってしまう。
 琴美の勤め先だったペットショップの店長・麗子さんは、三人の物語に椎名が巻き込まれている、と話す。二年前と現在が交錯し、最後に一つの物語が完結する。…

 …これはキたわ…。
 途中、先にラストを見たくてたまりませんでした。結末が知りたいと言うのではなく、琴美ちゃんの無事を確認したくて。不安がどんどん募ってくるのを振り払いたくて、色んな事を考えました。実は「琴美」は名字で男じゃないかとか、現在のどこかに出てきてないかとか、本当に馬鹿な事まで(苦笑;)。ドルジの言葉や行動理由の一つ一つに河崎や琴美の影が見え隠れする。もう切なくて仕方ない。構成が緻密で、隅々まで気を配ってる感じ。本当、うまい。
 出てくるエピソードにはくすくす笑ってしまいました。「ずば」や「ちょんぱ」の意味がわからないドルジ、動物園のレッサーパンダを盗もうと計画する幼い姉弟。『チルドレン』でも思ったのですが、作者、ハンデを背負った人の捕らえ方がとにかく前向き。子供達が逃走手段として車椅子を利用しようとする辺り、お見事!とか思ってしまいました(笑)。勿論悲哀も書いてはあるのですが。この本では外国人の。
 最後の最後でこの題名の意味が判ります。…考えられてるなぁ、すごいよ。