読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ひなのころ 粕谷知世著 中央公論新社 2006年

 一人の女の子の4歳から17歳までを描いた連作短編集。

 風美は古い日本家屋に、お祖母ちゃんと両親、弟と住んでいる。昼間、お祖母ちゃんは畑仕事をしているしお父さんは仕事、お母さんは病弱な弟に付きっきりなので、風美は大方一人だ。家には沢山のこけし人形やご先祖の写真やらがあって、風美はこれらとお喋りすることができた。飾られた雛人形を友達の家の雛人形と比べた夜、トイレに起きた風美は、この家を出ていこうとする雛人形達に会う。‥『雛の夜…風美四歳の春』。
 地元の小さなお祭りに、風美は幼なじみの優子と転校生の藤崎さんと遊びに行く。そこで封印されていた井戸の蓋を開けてしまった帰り道、藤崎さんは交通事故で死んでしまう。泣きじゃくる風美を祖母は「人は死んだらまた生まれ変わってくる」と慰め、風美はお母さんと、藤崎さんの家に線香をあげに行く。‥『祭りの夜…風美十一歳の夏』。
 機嫌の悪い父に怒鳴られ風美は家出や自殺を考えるが、「このからだも名前すらも自分のものではない」と空しい答えに陥る。半ば自棄になって上った納戸の二階で、風美はネズミに囓られてしまった雛人形を見つけ、雛人形の「いいんですよ」「こうして厄を受けるのがお役目なんですから」と言う言葉を確かに耳にする。同じく二階で、幼くして死んでしまった父の姉「稲子さん」の遺品も見つける。‥『月の夜…風美十五歳の秋』。
 風美は東京の大学に行きたいと思うようになっていた。そんな時父の単身赴任の話を聞き、家計を考えて地元の大学に志望校を変更する。いい子を演じるな、本音はどうなんだ、と言い募る母。ようやく積年の思いを両親にぶつけた夜、呆けが入ってきていた祖母が行方不明になる。ようやく見つかって家に戻ると、そこには「稲子さん」の姿があった。風美は稲子と祖母を引き合わせる。‥『年越しの夜…風美十七歳の冬』。

 粕谷さんの以前の作品は『クロニカ 太陽と死者の記録』と『アマゾニア』。侵略されたものの歴史を語る、みたいなイメージがありました。だからこの作品は以外でした。和物、しかも現代物を書くとこうなるのかぁ。とても細やかで気持ちが伝わる。これは私の小さい頃の家庭環境とも似ているから、ってのもあるでしょうね。ただ私の場合、病弱だったのは兄だったし、祖父母からの愛情は疑いもせず享受してました。…この辺の厚かましさがどうもお話にならない所だな(笑)。
 稲子さんの正体が、読者にはわかってるんだけど風美にはなかなか判らない。弟君がいい味出してますね。最後、台詞がどことなく説明口調になってしまったのが少し残念かも。
 幼なじみ優子ちゃんの性格がまぁ見事。こんなタイプの女の子確かにいたよな~、主人公側からの視点で書かれている分、どうしても憎まれ役になってしまいますが、彼女の言い分もちょっと聞いてみたい(笑)。