読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

さみしさの周波数 乙一著 角川スニーカー文庫 2003年

 短編4つ収録。

『未来予報 あした、晴れればいい』:小学生の時。登校拒否気味の転校生・古寺は「未来予報ができ
   る」と言い、主人公「僕」と幼なじみ清水加奈が、いつか結婚する、と宣言する。但し、どちら
   かが死ななければ。家が近所と言う以外特に親しくもなかった二人は、以来、意識してお互いを
   避けるようになる。高校卒業後、フリーターとして目的もなく過ごす「僕」は尚更加奈に会わせ
   る顔もない。だが、家が近い分、お互いの噂は聞こえてくる。加奈が体を悪くして入院したこと
   も…。
  …清水さんのフルネームはちゃんと出してほしかったぞ; 「加奈ちゃんって誰!?」とか思ってし
  まったわ(苦笑)。でも、本当、いい話。
手を握る泥棒の物語』:金に困った駆け出しデザイナーの「俺」は、遊びに来た伯母の金品を狙っ
   て、夜中、伯母の泊まっている旅館の壁に穴を空ける。伯母のバッグがある所に見当を付け、手
   を伸ばして握ったのは、若い女性の手だった。従妹だと思われる女性と壁越しに話をし、結果
   「俺」は自分のデザインした腕時計を部屋の中に落としてしまう。
『フィルムの中の少女』:大学で映画研究会に入った女の子。OBの撮った自主フィルムに、制服姿の少
   女が写っているのを見る。しかも回を重ねる度に、背中を向けていたその少女は段々こちらを向
   いてくる。その制服の校章は、彼女の出身校のものだった。
  …ラスト、これはまんまと騙されました。見事にうっちゃられて、でも予期してたより清々しい
  終わり方でした。
『失はれた物語』:妻と喧嘩した朝、事故で右肘より先の感覚以外、全て失ってしまった主人公。動か
   せるのは右手の人差し指だけ。ピアニストだった妻は、毎日彼の右腕を鍵盤に見立てて曲を演奏
   する。やがて、右腕を通じて、妻の感情まで伝わって来るようになる。
  …これは、辛いなぁ;

 目次を読んで首を傾げました。…あれ、「失はれた物語」は読んだことある気がする。ハードカバーで、白と銀を基調にした本じゃなかったっけ。半透明の紙に楽譜を刷り込んだ遊び紙が挟んであって、凝った装幀だなぁと思った覚えがあるんだけど。…結果、「失はれた物語」と「手を握る泥棒の物語」はやっぱり読んでました。で、思い出しました。もしかして、これが、作者が「ライトノベルに書いた物を再編集して単行本で出し直した」って言ってた本かなぁ。
 「自分はライトノベルを読んで大きくなり、ライトノベルを書きたくて作家になった。ところが、いざなってみると、出版界でのライトノベルの扱いが低くて落胆した。今回ハードカバーで出し直されたことは、有り難いけれど哀しさも感じる」…大体こんな内容の後書きを、書かれていた覚えがあります。
 …連想したのは、以前氷室冴子さんがエッセイで書かれてた状況。当時少女小説がブームを起こしていた頃、明らかに自分の著作を一編も読んでいないオジサマインタビュアーに、「こんな話は処女でなきゃ書けないんだろう」だの「子供騙してボロ儲けして、いい商売だ」だの言われたとか。…もしかして、あんまり状況変わってないのかな。
 私の学生時代はコバルト全盛期でした。氷室さんはじめ、久美沙織さん、新井素子さん達がシリーズ物を出していました。「大人向け」に移行した作品も含めてそのまま続けて読んだので、いわゆるジュブナイル(懐かしい言い方だな~・笑)に今でも抵抗はありません。有り難いことに。
 玉石混合なのはどのジャンルでも同じこと、ならばせめてそれに捕らわれず、少しでも高くアンテナを上げて面白い作品と出会って行きたいな、と思うのです。
 …とか言いながら、やっぱり苦手なジャンルはあるんですけどね(笑)。