連作短編集。
松虫通のファミリア
妻の遺志に従ってピアニストにするつもりだった一人娘 春美は、漫才師になると言って家を出て行った。それから十数年。震災に巻き込まれて死んだ娘の忘れ形見を引き取りに、吾郎は娘の元相方ヒデヨシを訪ねる。妻が娘のために買ったファミリアのワンピースを手に。
道具屋筋の旅立ち
年下の彼はいつも優美に女の子らしさを求める。服装、振る舞い、化粧法、都合のいい従順さ。スタイルのいい優美には、かつて太っていた過去があった。その底に流れていた 母親の歪んだ主張を、優美は今 理解する。
アモーレ相合橋
模型作家の杉本昭彦は、かつて作曲家・編曲家として、一作だけヒットを飛ばしたことがある。曲を提供した歌手 柿原登はその曲に縋って落ちぶれて行った。もう一度柿原に頼られ、杉本は虎の子の一曲を差し出してしまう。愛する女性が歌う筈だった曲を。
道頓堀-ズ・エンジェル
余命幾ばくもない夫に、隠し子がいることが分かった喜佐。結婚詐欺にあって一千万円盗られた都。二人は、人気漫才師で女優としても活躍している「カサブランカ」のチョーコに逆恨みして、劇場の前でチョーコを出待ち、そこで出会った。もう一人、妊娠して彼氏に捨てられた少女と合流し、三人はお互いの身の上を話し始める。
黒門市場のタコ
血の繋がりのない父親の過保護っぷりに悩んでいる翼。母親を亡くして、それは一層強くなった。通いの家政婦さんから、彼女の母親がチョーコと繋がりがあることを聞いて、翼はチョーコに会って話をしてみたいと強く思うようになる。チョーコの境遇は、自分と似ている気がしたから。翼が実際に会えたのは、妹のハナコの方だった。
ミナミの春、万国の春
吾郎の孫 彩の結婚が決まった。披露宴で母親の漫才ネタがやりたいと言う彩に、ヒデヨシは相方をチョーコに頼むことを思いつく。かつて春美が尊敬し、こうありたいと目指していたチョーコに。…
作者は1966年生まれ、ということで作者が青春を過ごした頃であろう大阪が描かれます。…なんかもっちゃりしてるなぁ、流行歌にしても漫才にしても。架空のこととしても、こんなん流行るかなぁ(苦笑;)。
登場人物が粘着質な方が多くて、それは遠田さんの作品の特徴でもあるんですが、こうも懐かしくも身近な世界を舞台に描かれるとちょっと私は引いてしまう。吾郎さんの奥さんの娘さんへの思いと言うか執念も、優美の母親の復讐の仕方とか理解しがたかったですし。奥さんの遺言を実直に守ろうとする吾郎さんには、待てよ、娘の意思は???と突っ込みたくなってしまう。
とは言え、当時の世相等懐かしく思う面もあり、優美の彼氏の言いざまとか、こんな人大勢いたよな、とも思いました。今なら当然アウトですが。…いい時代になりましたね(笑)。