読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

「声優伝 ~声の宝石箱~ 14時の回」に行って来ました。

 今なお活躍する80代・90代声優たちが集結!
 音響監督もお迎えして裏側から見た声優史、声優の成り立ち、「ここだけの話」を語り継ぐステージ!
「共演して思い出に残っている声優は?」洋画の歴史、アニメの歴史とともに歩んできたレジェンドたちの口から溢れ出す声優業界の黎明期譚に乞うご期待!!
                   (フライヤーより)

 5月15日(木)、『声優伝 ~声の宝石箱~』に行って来ました。
 外画やアニメの吹き替え黎明期を支え、今も活躍するレジェンド声優さんや音響監督さんにお話を伺うトークイベント。草月ホールにての開催です。

 このイベントの開催は新聞記事で知りました。生きたいな、行けそうだな、できれば昼の部も夜の部も行きたいな、そしたら宿を取らなきゃだけど土地勘がないからどこら辺のホテルがいいのか見当がつかない、夜行バスでその日の夜に帰ってこようかしら等々ぐずぐず迷ってる間に前売りチケットの発売期間が過ぎてしまい;; 結局 その日の朝に「当日券残っててくれ!」と祈りながら、一か八か新幹線に飛び乗ることに。…当日券残っててよかった…(苦笑;)。
 東京に行ったのは本当に久しぶり、電動キックボードの実物を初めて見ましたよ(笑)。

 昼の部のテーマは「洋画」、出演は羽佐間道夫さん、鈴木弘子さん、沢田敏子さんと音響監督の佐藤敏夫さん、主催兼司会の野村道子さん。

 始まりは舞台の真ん中に立った一本のマイクから。男女二人ずつの若手声優さんたちが、朗読劇で「声優」という職業の始まりを説明します。
 そして野村道子さん登場。ラインストーンのついたGジャン上下を着こなし、ご挨拶の後、自分が声優になったきっかけをお話されました。洋画の吹替で女の子の役をやり、「なんて素敵な世界を演じられるんだろう」「夢のよう」と思われたとか。これは、すぐ後で登壇された鈴木弘子さんも仰ってましたね、「夢のような仕事だと思った」。…ところがそれが地獄の始まりだった、とも(笑)。
 鈴木さんは淡い黄色のワンピースに白いボレロ風ジャケット、ふわふわの白い御髪も相まってビスクドールのよう。そう、レースやフリルって、年を重ねるとまた似合ってくるのよね~。杖を突いて足元がちょっと覚束ないご様子、沢田敏子さんがそっとエスコートしてらっしゃったり。沢田敏子さんは白いレースのブラウスに青のたっぷりしたフレアスカート、更に青色の濃い幅広のベルトを締めて、しゃんと伸びた姿勢がかっこいい。元々一般企業で秘書として働いていたのが、「これでいいのか?」と悩み始め、専門学校に通い始めたのだとか。
 羽佐間道夫さんは舞台中に飾られた花を見て、「祭壇ですか?」と笑ってらっしゃいましたっけ。

 羽佐間さんは91歳、「先輩」と呼びかける野村さんに「三つしか違わないでしょう?」と反論されてましたが、この2~3年の差が大きいそうで、曰く「羽佐間さんは生アフレコを経験されている」。そこから怒涛のエピソードトークが始まります。
 スタジオへ入る扉が重くて女性一人では開けられず、途中お手洗いに寄った女性声優さんが帰って来れなくなって、女性の役まで熊倉一雄さんと演じたとか、 テストの後 本番まで時間があったのでお酒を飲んでしまった人が、本番中にトイレで抜けて、本来の役ではない人が吹き替えをカバーし、なのに後からカバーした人が怒られたのだとか、「…大らかだったのねぇ」としか言いようがない(笑)。
 野村さんが羽佐間さんに「あの話してよ」と促されたのが『コンバット』でのエピソード。TBSの録音スタジオが前日の大雨で水没し、膝まで水が溜まっている中、長靴を履いて田中信夫さんとアフレコしたのだとか。よりにもよってその回のサブタイトルが『砂漠の〇〇』(すみません、これはうろ覚え;)だったそうで、「水音入ってたと思うんだけど」(笑)。
 昔は各局に録音スタジオがあったそうで、だからですね、昔の映画の吹き替えが何パターンも存在してるのは。
 生アフレコではなく録音の時代になって、でも当時は「抜き録り」なんてないから、ブロック毎に吹き替えていく。最後の最後でトチってまた最初からやり直し、肝の縮む思いをした。
 納得のいく演技ができず、「やりなおさせてくれ」とスタッフに頼んでも「オンエアで恥をかけ!」と一蹴されたことも。佐藤監督「それを生き残ったのがこの方たちです」。

 佐藤さんは初期の声優の仕事について、芝居がやりたくてもそれだけで食べて行くのは大変で、道路工事等肉体労働で糊口を凌いでいたのが、吹き替えは「好きな芝居ができてお金が稼げる」と広がって行った話を。
 キャスティングについては向こうの役者さんの声質等よりも、役柄を、引いては演技力を大切にして決めているとのこと。羽佐間さんが、ピーター・フォークが来日した時、声が違うと世間がざわついたエピソードを追加で補足されました。みんな、『刑事コロンボ』の小池朝雄さんの声で慣れていたから、と。
 佐藤さん、『フランダースの犬』について「実写でもやれるのにアニメにするという作品」(笑)。パトラッシュの前の飼い主 金物屋を演じられた飯塚昭三さんは、パトラッシュを罵る科白が真に迫らず(何しろご本人が優しい方だったそう)、佐藤さんは何回もやり直しを要求したとか。いざ放送日、飯塚さんは一緒に見ていた当時三歳の息子さんに「パパ、きらい」と言われてしまったそうで、「でもそれは財産だよ」と伝えたとのこと。『フランダースの犬』は辛い話でしたね、と仰ったのはどなただったか、テストから時間をおいて、気持ちを整えてから本番を迎えたこともあったとか。
 印象に残っている作品として映画『アマデウス』を上げられました。当時 局から「モーツアルトの吹き替えに有名人を使いたい」と言われたが、どうしても三ツ矢雄二さんしか頭に浮かばなかった。三ツ矢さんに科白を録音して貰って(「心中してくれ」と頼んだそう)プロデューサーに聞かせたら、「笑い声だけ使おう」「やっぱり有名人に」と言い出して、「何をばかな」と三ツ矢さんに決めた。コンスタンツェに宮崎美子さん、サリエリ日下武史さんを起用、そうしたら放送後 朝日新聞のコラムで「吹き替え版で漸く映画の内容が理解できた」との賛辞が載って、祝杯を挙げたのだとか。30年後、ディレクターズ・カット版DVDが販売されるに当たって三ツ矢さんと宮崎さんを招集、追加録音したが、二人とも声は全く変わっていなかった。
 …この映画は私も凄くよく覚えてます、放送後学校でも話題になりましたっけ。後日、宮崎美子さんがインタビューで「声の仕事をしたのが凄く面白くて」「機会があったらまたやりたい」と答えてらっしゃったのも記憶してます。
 訥々とお話をされる佐藤さん、でも舞台上の誰も話を遮らないのは勿論、相槌も入れない。ただ耳を傾ける。観客もみんな息をひそめてじっと聞き入る。佐藤監督への尊敬や信頼、思慕がひしひしと感じられた空間でした。

 鈴木弘子さんは野沢那智さんとのラブシーンを上げられました。ご自身妊娠中だったとか、濃密な時間を過ごされた後 明かりがついて、野沢さんひとこと「何だ、腹ボテとやったのか」(爆!・笑)
 暗闇の没頭感は凄いんだ、滝口順平さんにも「男は勃つし女は濡れる」と言われたことがある。…品のいい老婦人からの力説はなかなか迫力モノでした(笑)。

 「ラブシーンって楽しいわよね」とちょっとフォロー気味に入られた沢田さん、下ネタがOKなら、と話し始められました。かつて自分を強姦した男を、数年後 指し示すという状況で言う「あんた」の一言の科白になかなかOKが出ず、9回も言い直されたとか。映画の題名も言ってらっしゃったのですが、聞き逃しました、色々悔しい(苦笑;)。
 尊敬する先輩に来宮良子さんのお名前を挙げられ、「同じマイクを使う現場があったんだけど、畏れ多くて近寄れなかった」と仰ってました。

 機器の発達に伴い可能になった「抜き録り」について、苦言を呈されたのは羽佐間さん。「対話力が落ちてる」「何をどう伝えたらいいのかを掛け合いで掴んでいくもの」。
 AIについても、「人間を超えられない」「AIに子供は産めないから」。情報だけを伝えるならAIでも十分かもしれないけど、という言葉に鈴木さん「そんなに情報って必要ですか?」
 野村さんは「60秒で読んで下さい」と言われた原稿がどうしても読み切れなかったことがあって、「でもAIは読めるの」「息継ぎがないから」。…そこが違うんですか!
 沢田さんは、駅で流れるAIの英語のアナウンスに「聞きほれるの」と仰ってましたね、「発音とかとても綺麗で」。やはり情報を伝えるという点では優秀なんですね。

 レシピを色々なキャラクターで読む、とうのもやって下さいました。(その昔『俺たちひょうきん族』の1コーナーで、久米明さんが「イカの松笠焼の作り方」を読まれたのを思い出しました!(笑) 小山茉美さんも出てらっしゃいましたね)
 沢田さん、『アルプスの少女ハイジ』のナレーションもそうだったのね~!! 声を聴いて思い出しました。 「ほぼ初めてのアニメだった」って仰ってましたっけ。
 鈴木さんは数年前 脳腫瘍を患い、13時間もの手術を受けられたそうで、「今もリハビリ中なの」。朗読も「リハビリとして聞いてください」とのこと、でも途中で「ハナが出て来ちゃったわ」と笑い出されてしまいまして(笑)。羽佐間さんも途中で「ハナが出てきた」と中断されてましたっけ(笑)。

 野村さん推薦 コーラスグループILBUONOによる映画音楽の歌唱があったり、色々盛りだくさんでした。
 野村さんが矢島正明さんに聞いたインタビュー内容が(電話口で聞き惚れたそう)、ほとんど紹介されなかったのがちょっと心残り。ちょっとした一言から話が展開していくから、時間がなくなっちゃったんですよね。野村さん「まとまりがなかったのは私のせいです」って仰ってましたが、十分楽しかったです。

 何しろ記憶力だけに頼って書いたレポートです、覚え違いはご勘弁を。
 さて、夜の部のテーマは「アニメ」。こちらも参加予定です、幕間の2時間の間に腹ごしらえをしとかなくっちゃ。
 わくわくして待ちます(笑)。