ネタばれあります、すみません;
行き場もなく夜の街をさまよっていた家出少女チル。ある夜、路地裏に突如降ってきた黄金の髪を持つ美しい男。その口が発したのは――「うまれかわりを、のぞまれますか?」「我が王よ」。チルの長いお下げ髪の片方と引き換えにマントを纏わせ、瞬間、男の首は刎ね飛んだ。
かくして、チルは異世界に取り込まれる。破れたマントを胸に抱えて迷い込んだのは、かつて豊かな織物の国と呼ばれた動乱の国リスターン。今は王を失い、東西の国から侵略を受けていた。
リスターンでは聖獣クリキュラが次の王を選ぶ。印は聖衣、チルが纏っていたのはまさしくそれだった。転生したその世界で、チルは宮廷隊隊長マニージュと出会い、マントの修復のため、織師の女たちが戦禍から隠れ住む洞窟へと向かう。
あんな目にあってもクリキュラは生きているのか。だが、チルには妙な確信があった。クリキュラに会わなくてはと、マニージュの案内のもと、チルは東の国境の護衛隊ビージャンを訪れる。ビージャンは聖獣による王制に対し、人間による治世を望む反聖獣派の人間だった。だが、ビージャンはマニージュのお腹の子の父親でもあった。
身内からの裏切りにあい、チルはマントを奪われる。そのマントを使って偽王が立つと聞いて、チルとビージャンはその場に赴く。そこには、即位のため利用されるクリキュラを助けるために。… (裏表紙紹介文に付け足しました)
うぬぅ。この出版をよく決断したなぁ。
何しろ設定を見るだけで某超有名ファンタジー作品が頭から離れない。金髪の美青年(とは書かれてないか)が実は聖獣で、王を選ぶ役割を持つ。聖獣はいきなり行方不明、王として選ばれたセーラー服姿の少女は異世界を彷徨う。しかも王は長命で聖獣は木の実から生まれるとかあった日にゃあ、ここからいくらオリジナリティを加えても、バッシング覚悟ですよね??(苦笑;)
もうちょっと先行作品と違うように練れなかったかなぁと思いつつ、とにかくみんなチルに優しいのは大きな相違点。大人として、チルを思い遣る。「そりゃ無理ないよね」とチルの意思を尊重する。驚いたのは王を国のための犠牲と認識していること、この辺りはちょっと皇室を連想しました。チルの決断も優しいと言えば優しいし生ぬるいと言えば生ぬるい。
とは言え、視覚に訴えて来る描写は相変わらず、ビージャンが子供を得て考えが変わる場面には、保守的ですが納得しました。
「恋だけが、すべての障害を越える力があると、私達は信じています」なんて台詞が出て来るのはこの作者ならでは。何かちょっともやもやはしますが(苦笑;)。