新シリーズ4冊目。ネタバレになってるかも、すみません;
第一話 令和編『鶉籠』
「鎌倉文庫」――戦中、鎌倉の文士達が立ち上げた貸本屋。中には川端康成や夏目漱石の私蔵書もあったと言う。
古書店もぐら堂の娘 戸山圭が、扉子に見せた古書『鶉籠』には、『漱石山房』の他に『鎌倉文庫』の印もあった。現在ほぼ行方不明の貴重書籍を、何故彼女は手にしているのか。扉子は圭と連れ立って、持ち主 圭の大伯父の利平を訪ねる。利平はかつて鎌倉文庫を全て買い取ったことがあるというが、蔵の棚には古書は一冊もなく、8ミリフィルムがあるだけ。扉子は利平が『鶉籠』を借りたまま自分のものにしてしまったのだと決めつけたが、8ミリフィルムには土蔵にずらりと並ぶ蔵書が映っていた。圭の不興を買う扉子。後輩の樋口恭一郎は二人の諍いに巻き込まれ、和解の橋渡しをする。
第二話 昭和編『道草』
ビブリア古書堂で店番していた篠川登は、ある日いかにも成金な男から「鎌倉文庫」を蒐集したい、と相談を受ける。教養がないことを長年馬鹿にされてきた男 兼井は、金に飽かせて貴重書籍を集め、見返してやりたいのだとか。しかも自分の死後は、蔵書を全て焼いてしまうという。
久我山尚大と取引がある、と聞いてその場に居合わせた常連客 三浦智恵子は顔色を変えた。先日の古書交換会で出てきた鎌倉文庫『道草』をたよりに、登と智恵子はもぐら堂に向かう。果たして、久我山はもぐら堂店主の兄 利平に多額の金を貸し付けていた。虚言癖のある利平の言葉を、久我山は信じたのだろうか。
第三話 平成編『吾輩ハ猫デアル』
インターネットのオークションサイトに、見覚えのある『道草』と『吾輩ハ猫デアル』上編が出品されていたのを見つけた日、兼井の妻がビブリア古書店を訪ねてきた。実は『吾輩ハ猫デアル』上編を落札したのも夫人で、癌に侵され、余命幾ばくもない夫が、『吾輩ハ猫デアル』の中編、下編も手に入れたがっているのだとか。元々誰の所蔵品がオークションに出たのか。かつてもぐら堂が鎌倉文庫を売った相手と繋がりがあるのか。
兼井夫人の生前葬パーティーに招かれた智恵子、栞子、扉子。利平や圭も揃って、とあるお披露目に相伴するプロローグ、エピローグ。…
貴重古書を、そういう知識のあまりない後輩に、ぽん、と手渡しする圭の行動に驚きつつ。カバーか何か掛けられていたのかな、そういう描写はなかったけど、学生鞄の中に教科書やなんかと一緒にごっちゃり入ってたとしたら「大丈夫か!?」とか思っちゃうなぁ。…まぁ、恭一郎はそんな粗雑な扱いはしない人物だという見込みはあったんだろうけど。扉子の猪突猛進ぶりにも、それはちょっとあまりにもではないか?と思ってしまいましたねぇ。
「鎌倉文庫」というのは例によって初耳で、「お勉強させて頂きます!」って感じでした(笑)。今回物凄く後味よかったんですが、これは智恵子さんの悪辣ぶりが描かれてなかったせいかしら(苦笑;)。私は夏目漱石は『こころ』と『夢十夜』しか読んでなくて、『坊ちゃん』も『吾輩ハ猫デアル』も未読です。学生時代に読んどけばよかったなぁと思いますねぇ、何しろ今からではなかなか読む気になれない(←おい;)。栞子たちのあの読書量は、どうやったらこなせるんでしょう。再読とかもばんばんしてるのに。
今回、表紙の絵いいなぁ、と特に思いました。それぞれ違う制服を着た三世代の女の子、仕草や表情で性格も見て取れる。表紙の絵がなかったら、『鶉籠』(ですよね、あれ)があんなに分厚い本だなんて思いもしなかったし。
「鎌倉文庫」、本当にどこかにまとまって保存されてたらいいのに、と強く思いました。