シリーズ3冊目。連作短編集。
饅頭くらべ
最近南星屋の馴染みになった男 鹿蔵は、武家屋敷に中間として奉公しているという。参勤交代に従って諸国を訪れ、その地の菓子を食べ歩いているとのこと、旅好きの治兵衛と気が合って、治兵衛が作る名物菓子の監修などするようになった。だがある日、鹿蔵は夜中に南星屋を訪い、以来姿を消してしまう。治兵衛の手元には鹿蔵から預かった手紙が残された。鹿蔵は何者だったのか、折も折、起こった火事は鹿蔵と関係があるのか。
母子草
白粉屋 香仙堂は火事で焼け、娘 お崎の嫁入りが早まった。実家での最後の雛祭りを祝うため、南星屋に菱餅の注文が入る。だが当日、菱餅の引き取りが来ない。店まで届けに行くと、お崎は母親と揉めていた。お崎の縁談が早まるのと同時に、やもめの母親の結婚話も持ち上がっていた。
肉桂餅(にっきもち)
孫娘 お君に縁談が持ち上がっていたが、相手先に跡取り問題が起こっていると保留になった。肉桂餅を看板商品に据えている唐木堂は、経営に長けた兄と職人気質な弟二人で、この先 安泰な筈だった。小さい頃、南星屋の菓子を食べて感激し、病弱な兄に持ち帰ったという弟。良好だった兄弟の関係は、いつから食い違い始めたのか。
初恋饅頭
治兵衛の弟 石海は無類の甘党。なのに、今は菓子断ちをしているらしい。女との逢引も目撃されたとのこと、石海に詳細を尋ねると、石海は寺に修行に入った頃の思い出話を語り始める。寺の食事では足りず、いつも腹を空かせていた子供の頃、菓子を分けてくれた少女の話、彼女の境遇に思い至らなかった苦さを乗せて。
うさぎ玉ほろほろ
南星屋に女の子が乗り込んできた。少女かやは治兵衛の娘お永に、元亭主 修蔵への三行半を要求する。かやの母親は腕のいい鼻緒師だが惚れっぽく、娘から見ても幸せになる恋愛をしない。同じ長屋で何くれとなく親切にしてくれる修蔵の方が父親として好ましい、修蔵と一緒になってほしいが修蔵はまだお永に未練があるようだ。話を聞いた治兵衛は、その中にかやの母親の視点が欠けているのに気が付く。
石衣
鹿蔵の妹と名乗る女が訪ねてきた。鹿蔵が預けた手紙を返して欲しいと言うが、どうも正体が怪しい。治兵衛は以前鹿蔵が懐かしんでいた菓子の内容を手掛かりに、鹿蔵が仕えていた武家屋敷を突き止める。
願い笹
治兵衛の実家 岡本家から呼び出しがかかった。行ってみると、そこには鹿蔵の妹と名乗った女が。すっかり武家の女の装いで、改めて諏訪十亀乃と名乗り、鹿蔵の本当の身の上を語る。鹿蔵の本名は小暮周馬、役職は小人目付で隠密として働いていた。妹の仇を討つため盗賊の一味に加わって、そこで南星屋が標的になっていることを知ったらしい。七夕の日、鹿蔵の無事を祈る治兵衛。やがて鹿蔵は再び現れ、南星屋がまた目を着けられたことを伝える。…
ええと、人物設定等をすっかり忘れていましてですね、所々に出てくる過去のエピソードに、そうそう、こんな話だった、と遠い記憶を呼び起こされながら読みました; とか言いながら最後の最後、大落ちの名前がぴんと来ず;;前作の記事を確認しました。…記憶力の低下が憎い;
ついこの間TVで話題に上がってた岡山名物大手饅頭が出て来てびっくり。江戸時代からあったものだったのか~。製菓史の一面もあるんですね、いわれやら来歴やらが紹介されて、この後菱餅が三段になっていくんだろうな、と思わせる記述も。
お永さんの台詞、別居した亭主の中身が変わらず、自分は歳をとってしまった、変わってしまったというのは妙に身につまされるような。とりあえず亭主とは別れた様子、でもすんなり雲平とくっつくとも思えず。お君は落ち着く気配なく元気です(笑)。友達は次々嫁に行ってるみたいなのにねぇ。